Read

Read

読む

『猫町倶楽部』主宰・山本多津也の捨てられない本。『PHOTOGRAPHS “How Could I Send a Picture into the Desert?”』

何年も手放すことができない、何冊も買ってしまうような、『猫町倶楽部』主宰・山本多津也さんにとって大切な一冊。本について語る時、そこには人生の歩みと、本が紡ぐ新たな物語が刻まれている。

photo: Satoko Imazu / text: Nozomi Hasegawa / edit: Chisa Nishinoiri

連載一覧へ

20代の自分と今の自分をつないでくれる存在

本がない生活に憧れるのですが、実際はまったく手放せない(笑)。なかでもポール・ボウルズの『PHOTOGRAPHS』は思い出が詰まった写真集です。

20代の頃、彼の小説『シェルタリング・スカイ』に感化されて突発的にモロッコへ行きました。しかも作中の「旅行者は帰国しないこともある」という記述から、帰る日も目的地も決めない無計画な旅にして。迷路のような街を歩いたり、砂漠の真ん中でヒッチハイクしたり、強烈な異文化体験ができましたね。

写真集を手に入れたのはその数年後。モロッコの街並みの写真が、当時の感情や景色を思い起こさせてくれました。影響を受けた小説と人生で忘れられない旅の経験に強く結びつきのあるこの本は、僕にとって重要な存在なんです。

『PHOTOGRAPHS “How Could I Send a Picture into the Desert?”』
1947年にアメリカからモロッコへ移住した作家で作曲家のポール・ボウルズ。都市タンジールでの日々や、家族、友人を写した写真集。写真/ポール・ボウルズ。Scalo。

連載一覧へ