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写真家・若木信吾の捨てられない本。『アシジの貧者』

何年も手放すことができない、何冊も買ってしまうような、写真家・若木信吾さんにとって大切な一冊。本について語る時、そこには人生の歩みと、本が紡ぐ新たな物語が刻まれている。

photo: Satoko Imazu / text & edit: Chisa Nishinoiri

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自分の信念とリンクする、私的バイブル

きっかけは映画でした。20代後半の頃にたまたま同時期に『その男ゾルバ』『神の道化師、フランチェスコ』という2つの映画を観て。ジャンルも時代も違う作品だけどすごく印象に残っていて、ゾルバの原作者のN・カザンツァキが修道士フランチェスコを題材にした小説を書いていると知り、辿り着いたのがこの一冊。僕は特定の宗教に興味があるわけではないけど、信仰する人や何かを信じて行動する人の激しい熱量、発せられるエネルギーに興味がある。

それは自分がやっている写真にも通じることで、目の前で起きている出来事と自分の関係性、そこに何を表現するか。信じるものがなければ写真の中に何も落とし込めないから、それは自分にとっての信仰と言える。

本は目につくところに背表紙があることで全体がイメージできるんですよね。長い物語は細かい部分を忘れてしまうけど、ディテールを追いたい時にすぐにページをめくれるのが良い。常に必要なわけじゃないけど、自分の信念みたいなものを盛り上げたい時に年に何回か必要になる本で、だからこそそばに置いておきたいんだと思う。

映画化された『その男ゾルバ』『最後の誘惑』で知られるギリシャの小説家が描く、フランシスコ会の創設者であるカトリック修道士フランチェスコの生涯。著/ニコス・カザンツァキ。みすず書房。
映画化された『その男ゾルバ』『最後の誘惑』で知られるギリシャの小説家が描く、フランシスコ会の創設者であるカトリック修道士フランチェスコの生涯。著/ニコス・カザンツァキ。みすず書房。

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