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日本最大級のタコスイベントが初開催!熱気あふれるメキシコ大使館に潜入してみた

3月28日(木)、メキシコ大使館にて「タコスの日 1st Celebration Party 2024」が開催された。全国から集まった10店舗のタコス店の中から1位を決める「タコスグランプリ2024」や、テキーラやメスカルのフリーテイスティングなど、メキシコの魅力が感じられるコンテンツが目白押し。大盛況となったイベントの様子をリポートする。

photo: Koh Akazawa / text: Taichi / edit: Sho Kasahara

全国のタコス好きがメキシコ大使館に集結

2024年3月28日、時刻は13時すぎ。平日の昼間にもかかわらず、永田町にあるメキシコ大使館は多くの人々で賑わっていた。ラテンの陽気なBGMが流れる会場は、食欲をそそる香ばしいにおいで満たされ、至る所でタコスを頬張りながらテキーラをぐいっと流し込む人の姿が見られる。

「タコスの日 1st Celebration Party 2024」は、“メキシコのタコスをもっと広めたい”というタコス店や日本タコス協会の熱意によって実現した。追加分を含む120枚の入場チケットは、すぐに売り切れ。会場には北海道から沖縄まで、全国各地から“タコス好き”が集まった。なぜ今、“タコス”がこれほどまでに人々を魅了するのか。

タコスブームの波は日本にも

「世界的にタコスブームの波がきているんです」と語るのは、主催者の目時裕美さん。2010年からメキシコやテキーラのプロモーションに携わりつつ、業界の動向や最新情報を発信し続けている。

タコスイベントの主催者、目時裕美さん
目時さんはメキシコに通算23回訪れている、大のメキシコマニア。大使館との付き合いは長く、定期的にイベントを企画している。

近年、Netflixのドキュメンタリー番組『タコスのすべて』を筆頭に、タコスがメディアで取り上げられる機会が増加中。また、メキシコはコロナ禍でも一切の出入国制限が敷かれず、観光ビジネスが盛り上がったことも、世界にメキシコ文化が広まる後押しになったという。

「ここ数年で、日本でもタコス専門店は増えてきていますね」と目時さんは続ける。タコスは機材や設備が少なくても作れるため、出店のハードルが低いのも専門店増加の一因だそう。以前はTex-Mexというテキサスとメキシコの文化が合わさったスタイルが主流だったが、最近はメキシカンスタイルのタコスを提供するお店が増えてきているのだとか。

日本一のタコスを決める「タコスグランプリ2024」

今回のイベントには、メキシカンタコスを提供している10店舗が参加。タコスはそれぞれの店舗のブースで作られるため、来場者はできたてホヤホヤのタコスを堪能できる。素材のこだわりや作り方について、直接、丁寧に説明してもらえるので、美味しさも倍増する。

メキシカンタコスはトルティーヤが小さくて薄いことが特徴。トウモロコシの粉から作られているので、グルテンフリーな点も人気が上昇している理由の一つだ。

使用するトウモロコシの種類によって、香りや風味も変わってくる。例えば、メキシコではポピュラーな豚肉のタコス「パストール」を提供した〈AMIGO MARKET〉では、中南米料理店向けの食品店で仕入れたブルーコーンの粉を生地に使用。「強すぎず、弱すぎない」絶妙な香りが、具材の旨味を引き立ててくれる。

各店舗が自慢のタコスを選んだ思惑もさまざまだ。例えば、〈tacos trap’〉の店主・香川恭太さんは「最近、お店でも人気があるタコスを多くの方に知っていただきたい」という理由で、「チョリソーとアボカド」のタコスを提供。

その一方で、〈Mar y Tacos〉の店主・安田和義さんはほかのタコス店が肉系のタコスで勝負してくると予想し、「テイストの異なる『魚介の煮込みのタコス』を提供することに決めた」と語る。

また、「日本の食材とメキシコの食材を組み合わせる」ことがモットーである〈HOBO TACOS〉の店主・星稔(ほしみのる)さんは、普段から変わり種の創作タコスを多く提供。今回は来場者が他のタコスを食べる間に一休みしてもらえるような、優しい味わいの「玉子と桜エビ」のタコスでイベントに臨んだ。

ついに優勝店舗が決定!白熱の授賞式

来場者は「最も美味しいと思ったタコス」にのみ投票ができる。記念すべき第1回の「タコスグランプリ2024」優勝の座に輝いたのは、果たしてどのタコス店なのか。3位から1位までを順番に紹介していこう。

3位に選ばれたのは〈COMER MUCHO〉のパストール。普段は広島県に店を構える店主の田中健太郎さんは「とても有意義で勉強になった一日でした。来場者や出店者の皆さんのタコスに対する熱い気持ちをヒシヒシと感じました」とイベントを振り返った。

〈COMER MUCHO〉のパストール
〈COMER MUCHO〉のパストール
パストールは、メキシコでも定番タコスの1つ。特製のスパイスソースに漬け込んだ豚肉を香ばしく焼き、火を通したパイナップルと合わせて食べる。仕上げにピリ辛のサルサベルデをかければ、すっきりした味わいに。

〈COMER MUCHO〉
住所:広島県広島市南区宇品西6-2-4|地図
Instagram:@comermucho_tacos

2位に選ばれたのは〈Tacos Mercado〉の日墨友好トルティーヤの中華風カルニータス。中華料理店の跡取り息子だった吉川孝一郎さんは、メキシコ料理屋を始めたい気持ちを抑えきれず、家族の反対を押し退けて5年前にお店をオープン。地域の方にも愛されるようになり、たちまち人気店に。
授賞式では「オーソドックスなものから今まで味わったことのない変わり種まで、『タコスの自由度と可能性』を感じるイベントでした」とコメントした。

〈Tacos Mercado〉の日墨友好トルティーヤの中華風カルニータス
〈Tacos Mercado〉の日墨友好トルティーヤの中華風カルニータス
トルティーヤには甘味が強い茨城県産のホワイトコーンと、香りが強いメキシコ産のレッドコーンを半分ずつ使用し、日墨友好を表現。ナッツやゴマなどが入った中華風のサルサとワカモレのサルサを合わせることで、力強さと柔らかさが調和した仕上がりになっている。

〈Tacos Mercado〉
住所:東京都小平市花小金井南町2-2-16 ヴェルデ花小金井B1|地図
Instagram:@tacos_mercado

そして、最も多くの票を獲得し、堂々の1位に選ばれたのは〈CHILANGABANDA〉のスアデロ。店主の氣賀澤知宏(きがさわともひろ)さんは“タコス好き”が集まる会場のリラックスした空気感を楽しみながらも、品評の鋭さに緊張していたそう。授賞式では「まさか優勝できるなんて、超嬉しいです(笑)。タコス店を始めようと思ったのは、他の出店者さんたちの影響もあるので、本当にありがとうございます」と感謝を述べた。

〈CHILANGABANDA〉のスアデロ
〈CHILANGABANDA〉のスアデロ
トルティーヤには当日の朝に製粉したメキシコ産のトウモロコシを使用。塩も油も一切加えておらず、素材本来の味が楽しめる。メキシコのチレをローストした辛味のあるサルサが上品な肉の脂と絶妙に絡み合う、刺激的なビーフタコス。

〈CHILANGABANDA〉
住所:埼玉県桶川市南2-3-27|地図
Instagram:@taco_chilanga

より多くの人に楽しんでもらえるイベントに

大盛況で幕を閉じた今回のイベント。来場者や出店者同士の距離感も近く、タコスやメキシコ文化をより身近に感じられるきっかけとなった。

主催者の目時さん曰く、「今度はフードトラックなども準備して、屋内と屋外で楽しめるようにしたい」と次回の開催に前向きな様子。「タコスがまだあまり身近でない地域もあるので、イベントを通して魅力を伝えていきたいです」と意気込みを語ってくれた。

来年度も「タコスの日」(3月31日)の前後での開催を予定しているそう。イベント情報は「テキーラジャーナル」で告知されるので、要チェックだ。