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焼肉の街「東京/浅草」を探訪。戦後の闇市に端を発する古参から新機軸まで〜前編〜

都内に焼肉タウンは数あれど「浅草は店の粒が揃っている」と肉好きたちが口々に言う。キャラの立った6軒を巡った。

Photo: Kiichi Fukuda, Kaori Oouchi, Wataru Kitao / Text: Kei Sasaki

〈炭火焼肉 本とさや〉
人気は全国区!浅草焼肉の革命児

浅草焼肉探訪は、西浅草の〈本とさや〉から。座敷の壁一面を埋め尽くす色紙が物語るように、錚々たる著名人も数多く訪れる、浅草きっての有名店だ。が、店構えは、至って大衆的。平日はご近所の年配客や若いカップルも多い。「肉の前では皆、平等」。そんなラブ・アンド・ピースな精神が伝わってくる。

イチオシは上カルビなど人気部位とエビやサザエなどを盛り合わせにした「とさや盛り」。焼肉屋で海鮮?と思うが、新鮮なものを炭火で焼けば旨いに決まってる。「誰が来ても、食べたいものがある店に」という、サービス精神、お客さんへの愛が生んだ創業時からの名物だ。

〈幸福〉
済州島出身のオモニの味。

愛の焼肉屋から、幸福の焼肉屋へ。国際通り沿いで二十余年の歴史を刻むのは、その名も〈幸福〉という焼肉店だ。雷門通り裏にある〈金楽〉から枝分かれした店で、共に韓国・済州島出身の創業者夫妻の味がベース。A5ランク至上主義とは距離を置き、「赤身の旨さ」にこだわった仕入れで独自路線を貫く。

「肉を焼くのはお客様だけれど、直前まで最高の仕事をしたい」と、店主の金一雄さん。肉の目利きや扱い、タレのレシピも大事だが「最後は、タレをもみ込む、“手”の温度や力加減が味を決める」と話す。金さんや女将の任琴淑さんの手でしか作れない味は優しく滋味深く、満腹の腹をさすりながら「ヘンボッケヨ!(韓国語で『幸福』!)」と、言いたくなる。

〈金燈園〉
ザ・大衆。焼肉横丁、古参の一角。

焼肉店の多くは、町の西側、国際通り周辺に集中。中でもひときわ、店が密集しているのが、国際通りとひさご通りの間を走る、通称“焼肉横丁”。車の通れない細い路地を進めば、一軒先、その先も焼肉店。戦後の闇市にルーツを持つコリアンタウンが、街並みごと残っている。

その一軒、〈金燈園〉ができたのは、前の東京オリンピックが開催された1964年。蝋サンプルが並ぶショーケースは、ザ・昭和。煙で薄茶色に染まった壁も、多くの客に愛されてきた店の貫禄だ。「旨いものを、なるべく安く」の精神も開業時のまま。

数量限定「和牛中落ちカルビ」や銘柄豚「白金豚」を食べて、ほろ酔いになるまで飲んでも1人¥3500前後で、営業は朝は10時から。日曜の昼下がり、お客と店員が一緒にテレビの競馬中継に興じる様子も微笑ましい。浅草焼肉の良心がここに。