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北野武が、カルティエ現代美術財団との歩みを語る【ART CONVERSATION BY CARTIER】

フランスを代表するジュエリーメゾンのカルティエのアートをテーマにした連載。今回は、アーティスト・北野武と、カルティエ現代美術財団インターナショナル ディレクターのエルベ・シャンデスとの対談が実現!

photo: Taro Hirano / text: Keisuke Kagiwada

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現在、東京国立博物館の表慶館で開催中の『カルティエと日本 半世紀のあゆみ「結 MUSUBI」展ー美と芸術をめぐる対話』。同展ではカルティエのアーカイブコレクションと併せ、横尾忠則や村上隆をはじめとしたカルティエ現代美術財団と強い絆を結ぶ日本人アーティストの作品も多く展示されている。

2010年、カルティエ現代美術財団インターナショナル ディレクターのエルベ・シャンデスの熱烈なラブコールにより、初の個展『Beat Takeshi Kitano, Gosse de peintre 絵描き小僧』をパリで開催した北野武もその一人。この両者に、今日に至るまで共に歩んできた、その軌跡を語り合ってもらった。

“ビートたけし”というサインに込められた思いとは?

──まず、2010年にパリで開催された『Beat Takeshi Kitano, Gosse de peintre 絵描き小僧』について聞かせてください。これは北野さんにとって初の展覧会ですが、どのように企画されたのでしょうか。

エルベ・シャンデス

私が最初に触れた武さんのアートは、パリで観た映画でした。どこに魅了されたかといえば、まずはその美しさでしょう。同時に、武さんと色彩の関係、あるいは画面の構成力にも興味を持ちました。

また、ある時は脆さや悲劇があり、またある時には遊び心やユーモアがある……つまり、扱う言語の多様さにも好奇心をそそられました。『座頭市』を観たのは、そんなふうに武さんに関心を寄せていたタイミングだったと思います。

映画の爆発的な力に呆然としつつ家路に就く中、思ったんです。「武さんに会わなきゃ。武さんはまだまだ新しいものを生み出してくれるに違いない。映画にもしばしば登場する自作絵画の展覧会は、その一つのきっかけになるはずだ」と。

北野武

ただ、俺はバイク事故の後にちょっと絵を描いていただけで、正直に言うとあとは何も描いてなかったのよ。でも、「財団のビルを全部使って好きなことやっていいよ」って言うから。アートが何か知らないまま、蒸気機関車のミシンを作ったり、子供のように面白いと思ったことをやってみたのが、あの展覧会なんだよ。

最近は年をとって、絵を見たりすることもあるから思うけど、今だったら絶対あんな無茶はやってない(笑)。無知であることの強さがあるっていうか。だから、いいタイミングでやらせてもらったなとは思うね。

──会場に流れるインタビュー映像の中でも、北野さんは「自分は絵の技術の勉強をしたことがない」と強調されていました。同じように、映画の技術についても勉強したわけではないと思いますが、その意味で映画を撮ることと、絵を描くことというのは、ご本人にとって、近い行為なのでしょうか?

北野

たしかに、撮り始めた頃は“異業種監督”なんて言われていたけど、映画とテレビは同じエンターテインメントだから。例えば、映画は使っても3カメくらいだけど、テレビって5カメくらい使うんだよ。だから、カット割りとかに対する自分なりの考えとかは映画を撮る前からあったし、そうやってなまじかじっちゃっているから撮る時はプレッシャーがかかる。

絵を描くのは大変だけど、その意味では気楽だよ。映画に対する評価は気にするけど、絵に関しては全然気にしないから。「へただ」って言われても、「そりゃそうだろ」って(笑)。だから、今回の展覧会も横尾(忠則)さんとか村上(隆)さんとかと一緒に並ぶのが恥ずかしいというか、申し訳なくて。

サインを“ビートたけし”って小学生の落書きみたいな感じで入れているのは、「俺はコメディアンだ」っていうエクスキューズみたいなところもあるかもしれない。同じ土俵で戦ってないから。映画だとやや戦う感じがあるけど。

「絵具を大量に使うのは今も罪悪感があるんだよ」

──今回の展覧会でとりわけ目を惹くのは、画材を入れるスーツケースがモチーフの《Nécessaire Gosse de peintre》です。北野さんとメゾン カルティエの職人たちの共作だそうですが、どんな経緯で生まれたのですか?

エルベ

武さんは“絵描き小僧”ですから。「だったら、その小僧が動き回る時に持つ、画材を入れたスーツケースが必要だ」というごく自然な発想から私が提案して、カルティエの職人に作ってもらったんです。

北野

あれは俺の原画が基になっているんだよ。マッコウクジラの中にゾウが描かれた、マトリョーシカみたいなやつ。ケース全体がその象のシルエットになっているんだけど……カルティエの技術はやっぱりすごいね。

エルベ

私はやっぱり武さんのアートが持つ、子供のように自由な想像力が大好きなんです。それを表現した作品ですね。

北野

画材って話で言うと、子供時代の贅沢できない質素な暮らし方が染み付いちゃっているからいまだに絵具を大胆に使うことができないんだよ。ここ何年かだよ、絵具代を気にしないようになったのは。それでも大量に塗ることには罪悪感がある。もっとドンとやればいいのに、貧乏性が出てチマチマしちゃうんだよ(笑)。

絵の心構えは変わってない。楽しみながら描いているだけ

──今回では、北野さんが2018年から23年にかけて描かれた新作絵画も初公開されています。これらの作品について教えてください。

エルベ

私はこれまで長いこと武さんの絵を見てきて、カルティエ現代美術財団としてもたくさん収蔵させていただいています。だからこそ、「今回の展覧会では、ぜひ新作も」とお伝えしたところ、武さんはたくさんの絵の写真を山のように送ってくださいました。

そこから私が収蔵品とは描き方やテーマ、対象が違う、新しいスタイルの作品を選び、展示しています。今までよりももっと、ユーモアが感じられる作品が増えていると個人的には思っています。

北野

エルベさんはそう言ってくれるけど、俺としては絵に対する心構えは昔から何も変わってないと思うな(笑)。うまく描こうと思わないというか。描いている間、自分が楽しければそれでいい。あとで見た人も楽しんでくれるかもしれないけど、人様のために自分を犠牲にすることはない。「これ面白そうだな」ってものだけを描いているんだよ。まぁ結局、思ったようにはいかないんだけどさ(笑)。

『カルティエと日本 半世紀のあゆみ「結 MUSUBI」展ー美と芸術をめぐる対話』のオープニングレセプションでの一コマ。2人の後ろに見えるのは北野武の新作絵画。

ビートたけし《Untitled》2023年 ©T.N GON Co.,Ltd.

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