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食べる

焼肉の街「東京/浅草」を探訪。戦後の闇市に端を発する古参から新機軸まで〜後編〜

都内に焼肉タウンは数あれど「浅草は店の粒が揃っている」と肉好きたちが口々に言う。キャラの立った6軒を巡った。

Photo: Kiichi Fukuda, Kaori Oouchi, Wataru Kitao / Text: Kei Sasaki

肉のすずき〉
精肉店が母体。観音裏の繁盛店。

昭和・平成を生き抜いた“強豪”に、新たな店がどんどん加わり、分厚い層を成しているところが浅草焼肉の魅力。近年、浅草のグルメスポットとして注目を集める浅草寺の裏手・観音裏に肉好きを呼んでいるのが〈肉のすずき〉。

業務用冷蔵庫の扉のような入口に「自分が焼かれたりして」という思いが一瞬頭をよぎるが、母体の精肉店の遊び心と知れば楽しい。鳥取県産田村牛や北海道産のびえい黒牛など、稀少な黒毛和牛がリーズナブル。白いタイルを配したしつらえも高級感があり、オリジナルラベルのワインなど酒も気が利いていて、デートにもバッチリ。

〈焼肉 だん〉
浅草焼肉のニュースタンダード。

人気店の一角として必ず名前が挙がる〈焼肉 だん〉は、9年前のオープン。界隈の店に先駆けて排煙フードやワインを導入し、浅草焼肉をアップデートした立役者だ。ではイマドキな高級店かといえば、さにあらず。

兄弟で店を切り盛りする金尚孝さん、陶山昌孝さんは、浅草・ホッピー通りの名酒場〈鈴芳〉を営む母に育てられ、庶民の胃袋をつかむ味と空気に親しんできた。居心地のよさやおいしさの一歩先を見据えつつ「銘柄よりも状態」でその日の肉を厳選。連日の大賑わいにも納得だ。

〈焼肉BEAST〉
カウンター焼肉でシーンを席捲。

〆は2018年開業の〈焼肉BEAST〉へ。店主は〈本とさや〉の代表を叔父に持つ山田貴弘さん。同店で十余年修業し、兄とともに西浅草の〈焼肉やいち〉を立ち上げ、満を持して独立した焼肉界の“サラブレッド”だ。

焼肉屋には珍しいオープンキッチンで、厨房には火加減の調整が可能な特注の炭焼き台が鎮座。カウンターは、山田さんが目の前で最高の状態に焼き上げる肉を味わえる“シェフズテーブル”さながら。シャレている。が、理由を尋ねれば「焼肉屋の仕事が大好きだけど、お客さんの顔が見えないのは寂しくて」と、屈託ない。

扱う肉は兵庫県の生産者から一頭買いする太田牛のみ。状態も仕事もとびきりだが、ハーフポーションにも快く応じる粋なサービスは、〈本とさや〉を彷彿とさせる。

世代が代わり、店のスタイルがさまざまになっても、大事なものは変わらない。肉と、食べ手への暑苦しいほどの愛こそが、浅草焼肉を貫くスピリットなのだ。