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奇奇怪怪の百貨戯典:莫大な富を築く絵本作家と資本主義論

Podcast番組「奇奇怪怪」のMONO NO AWARE・玉置周啓とDos Monos・TaiTanが、予算100円以内で売られている中古書を今この時代に読み返す連載の第24回。前回の「今改めて真剣に読み返す『100ワニ』論」を読む。

text & edit: Daiki Yamamoto

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周啓

この本、家の本棚にもあったんだよ。

TaiTan

へえ。

周啓

今回は絵本の名作、『りんごかもしれない』です。

TaiTan

りんごの話を聞いても私の琴線には触れないのだが、これを作った人間には興味があるね。

周啓

この版元のブロンズ新社って、絵本のヒット作をたくさん出してる出版社で。作り方にも特徴があって、編集者側からイラストレーターや絵本作家に企画を持ち込むらしいんだよ。このヨシタケシンスケさんにもそうやって編集者側が持ち込んだらしい。

TaiTan

ふうん。絵本のヒットの分岐路ってなんだろうな。「これなら私にも作れる」って誰もが思うのに、絵本のヒットって100万部とかになるじゃない?

周啓

……まあ、確かにね。

TaiTan

例えばビジネス書の企画だったら時流を読んで企画を考えるだろうけど、じゃあ絵本の時流ってどこにあるんだって話で。絵本の編集者ってどういうメソッドを持ってるんだ?

周啓

ブロンズ新社ってもともと五味太郎さんの絵本から始まったらしいんだよ。創業者のお母さんがニューヨークの美術館で「落書きできる絵本」みたいなのをおみやげに買ってきて、「子供の頃にこれがあったらよかったな」ってつぶやいてるのを見て、五味さんに企画を持ち込んだらしくて。だから自分の子供の頃の感覚とか感性が必須の仕事なのかもね。

TaiTan

なるほど。絵本で売れた人って、途方もない金額が入ってくるんだよな。資本主義って稀少性の高いところに富が流れるわけだけど、絵本作家という最も再現性の低い領域で成功すると、金のにおいをさせないままビリオネアになれる……と。

周啓

なんで絵本を読んだ結論がそれになるんだよ!

ヨシタケシンスケ『りんごかもしれない』
ヨシタケシンスケ『りんごかもしれない』

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