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料理人・紺野真が語る、わたしの百読本「刺激もアイデアも、伝統の味も本に学ぶ」

ワインを楽しむ場として、日常と地続きのフランス料理を味わう場として、2軒のビストロを営む紺野真さん。世界一の称号を持つシェフの日記と、2005年の独立以前から心のうちで師と仰ぐ料理人のレシピを読む理由は?

Photo: Tetsuo Kashiwada / Text: Hikari Torisawa

『レネ・レゼピの日記』

『レネ・レゼピの日記』は、世界最高のレストランと称されるNOMAのヘッドシェフによる約1年間の記録だ。

「2015年にコペンハーゲンのNOMAへ行ったときにシェフのレネさんから直接いただきました。レシピ集とスナップ写真集とのセットで、英語版も持っているんですが、読むのはもっぱら日本語版の日記です。

目的は、何よりまず料理のためのインスピレーションを与えてもらうこと。新しい料理を考えていると、どうしても発想が結実しないときがある。そんなときは市場で旬の食材を見て、触れて、次にこの日記を開いてみます」

とはいえ、『レネ・レゼピの日記』には具体的なレシピの記述はない。

「書かれているのは、創造性を高めるための発想の転換、食材へのアプローチやラボでの試行錯誤の断片です。例えば、ルバーブという食材はデザートに使われることが多いけど、甘くせずに使ってみたらどうか、という日記を読んで、この考え方をほかの食材で試してみようか、自分の料理に当てはめてみたらどうだろう、などといつもとは違う角度から料理を考えてみる。

チーム内のフラストレーションが創造性の妨げになる、なんてドキッとするようなことも綴られていて、世界一のシェフでさえこんなに苦悩しているんだと勇気づけられることもしばしばです」

料理人・紺野真

教えを請うように読み漁り、
読み続ける2冊のレシピ。

きっちり読み込み、載っているほぼすべての料理をレシピ通りに作ったことがあるのが、『基本をきわめるフランス料理』と『レストランのシャルキュトリー』。どちらもウグイス、オルガン、紺野などと名前が記されている。

「もう何度も買ってるんですよ。店に置いていたらなくなってしまったりもするんだけど、僕にとっては手放せない本。料理人としての修業経験がない僕にとってはこの2冊がまさに先生でした。レシピにならって料理を作り、味を確認しに三谷青吾さんのレスプリ・ミタニに行き、櫻井信一郎さんのローブリューに足を運ぶ。

幸運にも、お2人の下にいたスタッフの方たちが僕の店に来てくれていたので、レシピではわかりにくい部分やコツを教えてもらいながら、ソースの作り方、クネルのようなクラシック料理、ヌイユはこういう料理に合わせるんだというような、フランス料理のエスプリの部分を学びました。

ブーダンノワールやアンドゥイエットなどのシャルキュトリーも2冊をそばに繰り返し作り、そこに自分なりの工夫を加えていきました」

発売から10年以上もの間、繰り返し読まれたレシピはまさにバイブル。

「読んだ回数は100回では到底きかないはず。新しい料理に挑戦するときでも、自分の根底の、揺るがない部分にはこの味があるんだと思います」

『基本をきわめるフランス料理』三谷青吾/著、『レストランのシャルキュトリー』櫻井信一/著、『レネ・レゼピの日記』レネ・レゼピ/著
(左)『基本をきわめるフランス料理』三谷青吾/著、(中)『レストランのシャルキュトリー』櫻井信一郎/著、(右)『レネ・レゼピの日記』レネ・レゼピ/著 清宮真理 ほか/訳。