オガサワラガク
「餃ビー」は昔から、町中華などで親しまれてきた日本の食文化です。やはりビールは餃子のベストパートナーだと思います。
白石達磨
大手メーカーのきれいなビールは餃子に合いますよね。
オガサワラ
爽快な飲み口が肉汁や油を洗い流してくれるから、食欲が湧きます。でも、いつも同じビールではもったいない。餃子も、野菜の餡であっさり、肉汁したたるこってり系など、味わいはさまざま。タイプに合わせてビールを選べれば、ペアリングの可能性が広がります。
白石
日本で流通するビールのほとんどはラガーの中の一種ですが、僕が扱うような小規模醸造所のクラフトビールは、苦味に幅があったり、酸味を伴ったりと、バラエティ豊か。ブームの発端となったアメリカだけでも、約8000のブルワリーがある。
今や日本でも、国産から海外産まで、クラフトビールの種類は豊富なので、餃子の個性に合った銘柄を提案できると思います。
オガサワラ
このご時世で、餃子をテイクアウトできるお店も増えています。好きな餃子を買って帰り、好きなお酒と自由に組み合わせる。餃子の新しい楽しみ方ですね。
白石
ただクラフトビールも餃子も個性が強いので、味の“殴り合い”になりがち。キャラクターを足したり引いたり、合わせたりして、ペアリングを考える必要があります。
ベーシック餃子〈みんみん〉
バランスいい餃子には、喉越しに秀でたラガーを。
白石
ガクさんが集めてくれた餃子を見ると、表情がさまざまですね。
オガサワラ
気づいてくださいましたか!フォルムがかわいいと、それだけで、餃子に恋してしまいます。
白石
えっ、恋ですか?(笑) 餃子に、そこまでの愛情を注げるとは。あっ、でも、この吉祥寺〈みんみん〉の焼き餃子、めちゃくちゃおいしい。僕、一目惚れしたかも(笑)。
オガサワラ
さすが白石さん、お目が高い。これは僕が思う、ベーシック・オブ・ベーシック餃子なんです。野菜と肉のバランスが理想的。
白石
皮も分厚いけど、餡も濃厚なのでいい塩梅です。餃子の味を邪魔しない方向ならアメリカ〈FIRESTONE WALKER〉のLagerが合うかも。ピルスナーと同じラガーの一種で、ヘレスというビアスタイル。
オガサワラ
これ、すごい!まるで水のように、ごくごく飲める。
白石
ホップが控えめで、飲みやすい。代わりに麦芽の旨味がきれいに出ています。飲み口のきれいなビールが、次の餃子を誘います。
オガサワラ
僕はこのベーシックな餃子には、奇を衒わずに、〈箕面ビール〉のピルスナーを推します。
白石
〈箕面ビール〉のピルスナーは、油を洗い流すだけでなく、柔らかい飲み口ですよね。
オガサワラ
いったん、口の中がリセットされることで、箸が進みます。
右:水のようにさらさらな究極ラガー「FIRESTONE WALKER Lager」
「〈FIRESTONE WALKER〉のLagerは水のような飲み口で、優しく餃子の油を切ってくれます。ただ注目すべきは、クリアだからこそ浮かぶ麦の旨さ。〈みんみん〉のような王道餃子に合わせると、皮の小麦の風味と一体感を醸成します」(白石) 594円(355㎖)。ナガノトレーディング TEL:045-315-5458。10時~17時。土曜・日曜・祝日休。
左:優しい爽快感の王道ラガー「箕面ビール ピルスナー」
「〈みんみん〉の餃子は皮がしっかりで、餡の肉と野菜のバランスが絶妙。〈箕面ビール〉のピルスナーは爽快なだけでなく、穏やかな飲み口で餃子のおいしさも受けてくれます。麦芽の程よい甘味も、肉餡のアクセントに」(オガサワラ) 418円(330㎖)。箕面ビール TEL:072-725-7234。9時~17時。日曜休。
あっさり餃子〈餃子の王さま〉
小麦のふくらみが野菜の甘味を受け止める。
白石
次は〈餃子の王さま〉のあっさり餃子を食べてみていいですか?
オガサワラ
どうぞ。餡は野菜がメイン。揚げるように焼いています。
白石
皮はパリパリだけど、野菜の旨味を吸って、適度にしなっていますね。しっとりと小麦が香ります。
オガサワラ
これには〈常陸野ネストビール〉のホワイトエールがいいのかなと。飲み口が穏やかなので、野菜の甘味をより引き立てます。
白石
ピルスナーで餃子の油を流す、先ほどとは逆の発想ですね。タッチの柔らかいビールで、餡の旨味を残してしまう。いいアイデアです。
オガサワラ
白石さんのセレクトはなんでしょう?
白石
僕は皮に着目して、〈麦雑穀工房〉のヴァイツェンです。小麦比率が高いのでテクスチャーが細かく、舌触りが滑らか。餃子の皮のしなやかさを生かします。
オガサワラ
あと、このフレーバー。餃子の皮の香りとマッチしますね。
白石
このビールも餃子の皮も小麦由来。ビールの香り、テクスチャー、味わいを餃子に寄せることで、自然なペアリングが生まれます。
右:野菜の甘味を受ける小麦ビール「麦雑穀工房 雑穀ヴァイツェン」
「ヴァイツェンは小麦麦芽を50%以上使ったビール。小麦比率が高いので、ホワイトエールよりも“受けのボディ”があって、小麦のふくらみが野菜の甘味をキャッチします。〈麦雑穀工房〉では、小麦も自家栽培で原料にしています」(白石) ¥660〜770(330㎖)*自家栽培原料使用比率で単価変動。麦雑穀工房マイクロブルワリー TEL:0493-72-5673。15時〜18時30分(土・日11時〜)。月曜・火曜休。
左:野菜の甘味と共鳴する小麦ビール「常陸野ネストビール ホワイトエール」
「〈餃子の王さま〉のノーマルな餃子は、具材のほとんどが野菜。小麦の酸味が軽く、柑橘のような風味も爽やかなこのホワイトエールなら、野菜の甘味を消さずに食べ進められます。ホップが控えめなので、まろやかで飲みやすいです」(オガサワラ) ¥407(330㎖)。木内酒造合資会社 TEL:029-212-5111。9時~18時。無休。