東西の"飲むあんこ"
【東】庶民vs.上様の呼び名が浸透する江戸っ子文化
東の“椀物”でまず特徴的なのが「ぜんざい」。汁気のないぽってりとした餡を、焼き餅や蒸した粟と食す。汁があるものは総じて「汁粉」で、こしあんの上品な風味を称して「御膳」、つぶあんを「田舎」と呼び分ける。隠し味に塩をかすかに効かせるのが江戸風という説も。
粟ぜんざい（汁なし）
蒸した粟に汁気を飛ばした熱々のこしあんをかけた一品。〈みはし〉ではプチプチとした食感の北海道産もちきびを使用。餡は厳選した北海道産えりも小豆を直火＆銅釜で炊き、丁寧に晒した自慢の味。冬季限定（11月～GW）。700円。
田舎汁粉（汁あり・つぶ）
素朴なつぶあんのお汁粉が「田舎」。〈みはし〉は十勝・富良野産の大納言とこしあんを合わせた贅沢なスタイル。大粒の大納言の豊かな香味が楽しめる。餅は毎朝つきたてで、網焼きにした香ばしさが華を添える。通年提供。700円。
御膳汁粉（汁あり・こし）
こしあんならではの、小豆の呉ご（皮を除いた中身）の風味と上品な口溶けが堪能できる「御膳」。〈みはし〉の命、滑らかな餡は、2021年秋から塩を使わず、砂糖のみの味つけに。より角の丸い甘みへと進化した。通年提供。700円。
〈あんみつ みはし 上野本店〉の店内。 
写真は粟ぜんざい。箸休めは小梅。
【西】つぶあん贔屓の地域性がくっきりと
関西では、つぶあんの汁ありを「ぜんざい」、こしあんなら「汁粉」と呼ぶ。小豆の名産地・丹波の品種が煮崩れしにくくつぶあん向きなことから（諸説あり）、つぶあん派が優勢な地域性だけに、「汁粉」の影は薄め？あんこ好きの本能を揺さぶる、関西特有の「亀山」も。
亀山（汁なし）
汁気を切ったつぶあんをシンプルに味わう「亀山」。名の由来は最初に供した大阪の甘味処の店名、小豆の産地名と両説あり。〈かさぎ屋〉では、粒を潰さぬようにふっくら炊き上げた丹波大納言小豆を使用。焼き餅入り。900円。
ぜんざい（汁あり・つぶ）
つぶあんに水を加えて温めれば、関西流「ぜんざい」の完成。亀山に比べてつぶあんの存在感は控えめながら、〈かさぎ屋〉のぜんざいは小豆のふくよかな風味が感じられる。七輪で焼き上げた香ばしい餅と共に。750円。
お汁粉（汁あり・こし）
こしあんを水で溶いて温めたものを「お汁粉」と称する。〈かさぎ屋〉では仕入れた生あんに砂糖を加え、店内のかまどで練り上げたこしあんを使用。初代店主の曽祖母が東京出身というルーツを伝える一品。東京御膳志る古750円。
〈かさぎ屋〉の店内。 
「亀山」箸休めは青ジソの実入りの漬物。
