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料理家・麻生要一郎の「私の食堂、私の一皿」。〈黒船亭〉のタンシチュー

洋食には「おいしい」や「好き」だけではない思い出や物語があります。あの人は、どんなメニューが好きなんだろう。洋食を愛する料理家・麻生要一郎さんにお気に入りの食堂と一皿を綴ってもらいました。特別な一皿をどうぞ。

photo: Kazuharu Igarashi

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東京・上野〈黒船亭〉のタンシチュー

寄稿・麻生要一郎

大人になってから好きになったのは、ノスタルジー感溢れる上野界隈。上野恩賜公園を散策、不忍池のほとりにある〈黒船亭〉へと向かう。ここでの目当てはタンシチュー。かつては文明開花の幕開けと共に洋食の花形メニューであったが、手間暇かかるからなのか、供する店は少なくなった。

オーダーすると、やわらかく煮込まれた立派なタンが2枚、惜しみなく供される。付け合わせも一つ一つ手をかけた老舗の味。1週間かけて作るデミグラスソースの、しっかりとした深い味わい、優しい余韻は、ご飯にもよく合う。

色々食べたい方には、ハーフサイズもあり、エビフライ1本、ビーフとタンのミックスというのも可能。帰り道、御徒町の三香園で日本茶を買い、サンリミットでシャツを選び、吉池で晩の食材を吟味するのも、醍醐味。(筆)

上野〈黒船亭〉のタンシチュー
1週間かけて仕上げるデミグラスソースで、タンが軟らかく煮込まれる。3,900円。

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