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中華を超える、東京の異業種餃子11選 〜後編〜

餃子は、今や専門店や中華料理店だけのものではない。イタリアン、フレンチビストロ、居酒屋、テキーラバー……。見回してみると、さまざまなジャンルのいい店に“ならでは”な工夫が凝らされた、個性の光る餃子がそこここに。前編はこちら

photo: Shin-ichi Yokoyama, Yoichiro Kikuchi, Hisashi Okamoto / text: Ayako Takahashi / text & edit: Haruka Koishihara

〈菱田屋〉の自家製焼餃子

1個70g超!味わいも満足度も横綱級、ガッツリ気分の日の最適解

ボリューム満点な豚生姜(しょうが)焼きやフライなど10種類以上の定食が大人気の、毎日行列が絶えない人気店。夜は、お酒と楽しめる単品料理もぐっと増え「自家製焼餃子」もその一つだ。5代目店主の菱田アキラさんは中華料理店での修業経験があり、餃子はお手の物。

餡のベースとなるのは粗く切った豚バラ肉やニラ、キャベツ、ネギ、ショウガ。存在感のある具材に負けぬようラード、鶏ガラスープ、黒コショウなどでしっかりめに味を調え、さらに「フライドエシャロット」で香ばしさもプラスするのが菱田さん流だ。これを直径が大きい厚めの皮で包み、白絞油(しらしめゆ)と水を入れて沸点を上げたフライパンで揚げ焼きにすれば、カリッ&ジュワッと至福の一品が完成!

〈Gatito〉の餃子盛り合わせ

あくまで裏メニュー。だけど圧倒的な人気を誇るアソート餃子

テキーラが大好き。そして、餃子も。「阿佐ケ谷の〈豚八戒(ちょはっかい)〉には、オープンした頃に通いました」というエピソードからも餃子愛の強さが窺える店主・伊藤裕香さんが開いたテキーラバーでは、自ずと餃子が名物になった。裏メニューではあるが、お店を訪れる人の大半が注文。

20種類以上のレパートリーから、その日おすすめの5種を盛り合わせで供する。この日は「ゆず」「ガパオ」「唐辛子味噌」「にんにく」「実山椒れんこん」。キーとなる食材は大きめに切る、餡に混ぜずに上にのせて包むなどの工夫で、それぞれの持ち味を際立たせる。しかも、伊藤さんが選ぶアガベ(竜舌蘭)100%テキーラは口の中の脂をさっぱりとさせ、餃子と相性抜群!

〈WE ARE THE FARM目黒店〉のケール餃子

ケールのおいしさを広めた立役者が作る、ケール愛がぎっしり!の餃子

オーナーシェフの古森啓介さんは、ケールが日本ではまだ青汁にしか使われていなかった頃に、アメリカでその魅力に開眼。本来は冬が旬のケールを通年育てるために畑を耕し、今では東京ドーム5個分の自社農場で、ケールをはじめとした野菜を育てている。そして先頃、念願のケール餃子がついに店のメニューに加わった。

鮮度が命のケールは、朝採ったものをその日のうちに加工しなければならないうえ、熱を入れると色が飛びやすいため、美しい緑色の皮を実現するのには苦心したそう。餡も、つなぎ程度の豚肉と白菜、ネギ、ショウガ、ニンニクを混ぜたのみで、ほとんどケール。新鮮なケールを丸ごと食べているかのような、ヘルスコンシャスな餃子だ。

〈スパイス&ハーブ居酒屋やるき〉のスパイシー鶏皮ぎょうざ

居酒屋を愛するトニーさんが編み出したオリジナリティ満載の餃子

居酒屋チェーン〈やるき茶屋〉で10年間活躍した後、自身の店を開いたインド人のシャヒン・ジャカリヤ・トニーさん。得意のスパイス使いを生かしたメニューは、ここでしか味わえないものばかり。特に「スパイシー鶏皮ぎょうざ」は、タンドリーチキンやきとりなどを作る際にはがした皮を、余すことなく使うために考案したアイデアメニューだ。

生の鶏皮に鶏挽き肉やキャベツ、タケノコ、シイタケを混ぜた餡を包み、蒸してから冷凍。これをオーダーごとに揚げて、熱々のところに特製スパイスをたっぷりまぶす。クミン、コリアンダー、チャットマサラ、マンゴーパウダーetc.の香りが複雑に絡み合う、なんとも魅惑的な酒のアテだ。

新中野〈スパイス&ハーブ居酒屋やるき〉のスパイシー鶏皮ぎょうざ
スパイシー鶏皮ぎょうざ/3個418円。寸:10cm、ヒダ:無、皮:普、具:普。
インドのビール「タージマハル」550円はさっぱりテイスト。

〈小料理百けん〉のセロリ餃子

ほかにはないひとひねりが食べた瞬間感動する餃子に!

「かじった瞬間口の中に広がる、ジュワッとした肉汁とシャキシャキとしたセロリの瑞々しさを味わってほしい」と話すのは、オーナーの“まっさん”こと松崎友江さん。豚挽き肉とだしを一緒に練り込んで脂に水分を含ませ、たっぷりのセロリとキャベツを混ぜる。

味つけは醤油、酒をベースに、みりんが隠し味。皮は、モチモチではありつつカリッと焼けて食感が良いものを探しに探した。ギリギリまで餡を包み、焼き面は薄いおせんべいのようにカリカリに、周りはモチッと焼き上げるのが、味わいの秘訣。食べた瞬間のファーストインパクトは、松崎さんの狙い通りだ。酢とコショウだけのタレも潔く、間違いなく酒が進む餃子。注文率ほぼ100%というのも納得!

〈ニショク〉のスープ餃子

ポルチーニがむんむんに香る餃子とスープの一体感を味わう

広島・瀬戸田産の上質なレモンを使ったレモンサワーをはじめとするサワー類が種類豊富なうえ、ナチュラルワインも。充実のアルコールによく合うつまみを取り揃えているのが、ここ〈ニショク〉。特に揚げ物に力を入れていて、ラムカツ、メンチカツ、自家製タルタルソースを添えたアジフライに揚げピザとよりどりみどり。

そんな中、シェフ渾身の一品としてスープ餃子もオンメニュー。キーとなる食材は、イタリアの乾燥ポルチーニ。水で戻したものを刻んで餃子の餡に混ぜ、戻し汁はスープのベースにする。ポルチーニ以外にも、フランスや日本のキノコも7〜8種を加えているから、旨味と風味の凝縮感がこの上ない。飲んだ〆に頼みたくなる餃子だ。