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厳選素材、伝統製法で作られた日本のクラフト調味料をテイスティング!〜前編〜

調味料の世界にもクラフト化の波到来⁉そこで、手間を惜しまず、時間をかけて昔ながらの手法で作られた、7種全36品の調味料を、日本中から厳選して取り寄せ。製造現場を訪れ、作り手との交流もある食のプロ3人が、五感を研ぎ澄ませて試食し、味わいや使い方を指南する。

※本記事は2020年11月20日発売のBRUTUS特別編集『増補改訂版 日本一の「お取り寄せ」を探せ!』に掲載された内容です。

photo: Shin-ichi Yokoyama / styling: Makiko Iwasaki / text: Yuko Saito

クラフト調味料は、日本の財産であり、文化だ!

近年、調味料の世界にもクラフトの波が押し寄せているらしい。でも、そもそもクラフト調味料って、どういうもの?いつもスーパーに並んでいるものと、どう違う?注目されている、そのワケは?まずは、調味料を知り尽くした、食の最前線に立つプロ・高橋義弘(日本料理人)、生江史伸(フレンチシェフ)、太田久人(ワインインポーター)が熱く解説します!

生江史伸

特に30代、40代の造り手に、これまでの材料や製法を見直して、質を上げようと志す人が増えている気がします。

太田久人

僕も地方の生産地を訪れていて、すごくそれを感じます。

生江

醤油でいえば、短時間で安定して造れる加工大豆を使ったものが主流の中、昔のように大豆そのものから、時間をかけて造る人が増えた。

太田

砂糖や油にしても、材料や抽出の仕方にこだわるだけでなく、自分で材料を栽培するところから手がける人が出てきました。

生江

戦後、経済が成長するためには、たくさん作って、効率良く売ることが必要だったんだけれど……。

高橋義弘

その結果、調味料が手頃な値段で入手できるようになったものの、似通った商品が多くなってしまい、“地域ごとにもっと個性的な作り方があってもいいのでは?”と思う生産者が出てきた。

太田

味噌や醤油を仕込む木桶の大樽を製造できる工房が、大阪・堺にある製桶所1軒になってしまい、このままでは伝統の醤油造りができなくなると、その製桶所に弟子入りした醤油の蔵元も小豆島にいます。

高橋

木桶仕込みは時間もかかるし、そこに棲(す)みつく微生物が発酵に関わるので、難しさもあるけれど、一方で、個性や深みが出るので、追求したくなる面白さがある。

生江

醤油の蔵元に2泊して、麹造りを学んだこともありますけれど、とても興味深いんですよ。あとね、海外からの影響もあると思います。

高橋

あ、それは大きいね。

生江

僕の修業時代は、アルチザンの塩といえば、ゲランドの塩ぐらいでしたけど、“この地方の塩田でこう作られているから、価値がある”と教えられた。そんなところに感化された作り手も多いんじゃないかな。

高橋

味噌や醤油は、海外からも注目されるようになっているし……。

生江

たぶん、大量生産の時代でも、昔ながらの手作業で作っている職人は、少ないながらもいたはず。でも、彼らの親の世代は、職人気質というか、自分から作り方や特徴を発信していこうという人が少なかった。

文化をつなぐ心意気で、顔の見える調味料を買おう

高橋

それに比べて、いまは作る側の発信力があって、それこそホームページを開けば、材料から製法まで詳しく書いてある。でも、その半面、たくさんの情報の中から、何をどういう基準で選ぶのか、消費者にとっては非常に難しい時代。

生江

実際、一般の人がブラインドで味見をしたら、丸大豆から木桶で造った醤油をおいしいと思うかどうか。もしかしたら、添加物が加えられた大量生産の醤油の方がおいしいと感じる人もいるかと思います。

高橋

本当にそう。おいしさの基準は人それぞれだし、調味料の使い方も経験値によってさまざま。ましてや、調味料は味の比較がしにくいので、選ぶのも難しい。例えば、本みりんとみりん風調味料の違いを知っている人は、どのぐらいいるのかな、と思う。

太田

砂糖も、本来は農産物。サトウキビの品種や産地によって、個性の違いが感じられて当然、なんていっても、機械で精製された砂糖が当たり前だと、ピンとこないですよね。

生江

大量生産でも味の満足度が高いものが増えているから、木桶で仕込むだけでなく、おいしく造らないとダメな時代。でも、財産ですから、絶やしたくはないですよね。

高橋

味噌や醤油を造る技術というのは、日本の文化やし……。中には、地元から広がって、いまや海外でも人気を集めている調味料もありますけれど、まだまだ一部。やっぱり、とても大変な職人仕事なので、ちゃんと支援していかないと、次の世代につながっていかない。

生江

きっと、ほんとは大事だったんだけど、どこかで絶えてしまった技術もあるんでしょうね。

高橋

一度絶えてしまうと、もう戻せないですからね。どうつないでいくかは、いまの時代に生きている人間にかかっていると思います。

太田

やっぱり、自分の体の中に入るものですから、どこの誰が育てたのかわからない材料で、機械が作ったものより、作り手の顔が見えるものを使いたいですよね。

生江

経験値がなくても、“木桶で、江戸時代から続く製法で”って書かれていれば、そこに信頼を感じるし。人の手で作られたものは、シンプルに食べたいじゃないですか。だから、試してみればいいと思う。

太田

スーパーで、300円で買う油が当たり前だと思っていると、たしかに値段は高いです。でも、ゴマ1粒からどれだけの油が抽出されるのか、ちょっと想像を巡らせてみてください。原料を無農薬で栽培して、収穫して、溶剤を使わずに、時間をかけて搾っていれば、そんなに安くできるはずないですよね。

生江

塩にしても、自分で海水を汲み上げ、火を絶やさず、何時間も炊くのは大変な作業。味も大切だけど、そうやって、汗を流して作ってくれた人の努力は、受け止めたいし。

太田

僕はイタリアのワインを輸入して売っている商人なので、自分がそのワインを飲み続けたいなら、売り支えなければいけないと常に思っていて。それは、食材に対しても同じで、おいしい醤油を使いたいなら、それを買い支えることが大切だと思うんです。

高橋

それが、文化を残していくことにつながるのだから、なおのこと。

太田

自分の体の中に入れるものが、自分を作るんです。ましてや、調味料は頻繁に使うもの。少々高くても、ブランドもののバッグを一つだけ我慢して、ここに投資してみてもいいんじゃないでしょうか。

醤油、みりん、油、砂糖、酢、味噌、塩
醤油
●国産丸大豆を使用。
●木桶で仕込む。
●麹の力だけで発酵、熟成させた天然醸造。

みりん
●米麹、もち米、米焼酎のみ使用。
●1年以上、熟成させる。
●非加熱処理。


●材料が国産、または自社栽培。
●1種類の作物だけで作っている。
●有機溶剤不使用、時間をかけて低温で搾る。


●材料はすべて国産。
●醸造アルコール不使用、自然に任せて酢酸発酵。
●熟成期間が長い。

味噌
●大豆、塩、米、麦のみ使用。
●麹菌の力で自然に発酵、熟成。
●加熱処理せず微生物が生きた生味噌。

砂糖
●国内栽培のサトウキビのみ使用。
●栽培地でサトウキビを搾る。
●機械では精製しない。


●材料は、日本の海水のみ。
●自然の力や人間の手で結晶化。
●製塩は少数精鋭で。
日本料理人・高橋義弘、フレンチシェフ・生江史伸、ワインインポーター・太田久人
左から/高橋義弘(日本料理人)、生江史伸(フレンチシェフ)、太田久人(ワインインポーター)。