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厳選素材、伝統製法で作られた日本のクラフト調味料をテイスティング!〜後編〜

調味料の世界にもクラフト化の波到来⁉そこで、手間を惜しまず、時間をかけて昔ながらの手法で作られた、7種全36品の調味料を、日本中から厳選して取り寄せ。製造現場を訪れ、作り手との交流もある食のプロ3人が、五感を研ぎ澄ませて試食し、味わいや使い方を指南する。

※本記事は2020年11月20日発売のBRUTUS特別編集『増補改訂版 日本一の「お取り寄せ」を探せ!』に掲載された内容です。

photo: Shin-ichi Yokoyama / styling: Makiko Iwasaki / text: Yuko Saito

日本のクラフト調味料をテイスティング!

海水から人の手で作られた塩は、甘味も苦味もある

原料となる塩を加工するのではなく、日本で海水を汲み上げて作る塩。製法は6種6様だが、どれも自然と人の手で結晶にしたものだ。

生江

塩化ナトリウムだけでなく、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど、いろいろな栄養素を感じる。

高橋

どの塩も、塩味、旨味、苦味、甘味を持っているけれど、製塩法によって、味の感じ方やバランスが違っていて、それが個性になっている。

生江

(2)や(6)のように天日だけで結晶にするのと、(1)や(4)のように釜で炊くのでは、味わいが変わってきて、天日の方が、よりシャープ。

太田

同じ釜炊きでも、火山の地熱を利用している(3)は、にがりっぽさを感じますし、(4)や(5)は塩なのにむしろ甘さを感じる!

生江

(5)は、海水を山に運んで、檜(ひのき)のハウスで結晶にした塩か。面白いなぁ、釜で炊かないのに、甘い!

高橋

食べる塩やね。(1)は吸い物、(3)は肉、(4)は魚……と、使い分けできるなぁ。

生江

6種類も試したのに舌が疲れないのには、驚きました。

ワインインポーター・太田久人

醤油

淡口からたまりまで。木桶が目に浮かぶ、ふくよかな味と香り

効率のいい脱脂加工大豆ではなく、生産者がわかる豆そのものを材料に、菌が棲(す)みついた木桶で、長期間じっくり熟成させたものをセレクト。

太田

丸大豆の持つ油のおかげか、熟成期間なのか。ほとんどの醤油が、お酒を足すぐらいで、料理の味を決められちゃうんじゃないかな。それぐらい、ふくよか。(7)も、淡口なのに塩気がやわらかくて、驚きました。

高橋

ほんとにどれもしょっぱくない。(12)のたまり醤油でさえ、まろやか。(10)(11)(12)は、香りなのかなぁ、木桶の風景が浮かんでくる!

生江

(11)は、まさに、木桶作りを学んで、復活させようと頑張っている蔵元の再仕込み醤油ですが、甘味と旨味が感じられますね。

高橋

滋賀で造られた(9)は、関西の味というか、すごく身近に感じる。

生江

関西の白身魚に合いそうな、色を見ないと淡口のような濃口。江戸時代から続く杉樽で造られているというから、やっぱりそこの風土に合った味になるのかな。逆に、(10)は赤身魚に合いそうですしね。

日本料理人・高橋義弘、フレンチシェフ・生江史伸、ワインインポーター・太田久人
左から/高橋義弘(日本料理人)、生江史伸(フレンチシェフ)、太田久人(ワインインポーター)。

味噌

麹が生きた味噌は香りが豊かで立派な料理だ

米、麦、大豆。麹をつける材料は違っても、温度調節や添加物で、無理に発酵を進めたり、止めたりしない。味噌蔵で自然に発酵させた味噌6選。

生江

どれも、麹が生きているのがよくわかる。特に(14)の麦味噌は、麹がバーンっと迫ってくる!あとね、香りがある。(18)の豆味噌は、煎りゴマみたいで、こんな香り、初めて!

高橋

(16)は麦味噌なんだけど、それこそ八丁味噌のような風味がする。

太田

麹菌を人工的に振りかけるのではなく、蔵の中に自生する麹菌を利用した、珍しい味噌なんですよ。

生江

そう言われれば、沖縄の泡盛工場を訪れた時と同じ香りがする!

高橋

(13)の白味噌はもちろんだけど、どれも全然しょっぱくない!

生江

だから、いくらでも食べられるし、食べ飽きない。材料の割合や熟成の違いで、色も味も食感もここまで違うものができるんですね。

高橋

もはや立派な料理。菌が生きていて、色も味も変化するので、そのままの状態を維持するなら、小分けして冷凍するなど保存方法も大事。

味噌

素材の味が伝わる、そのまま飲めるクオリティに驚き

輸入した原料を、有機溶剤で溶かして作る油とは別物。原料となる農作物は1種類。それを厳選し、時には自ら栽培し、時間をかけて、低温でゆっくり搾ったものばかりだ。

生江

油のテイスティングはキツイだろうなぁと、覚悟してたんだけど、普通に飲めて、サラダ油で育った世代には、びっくり。特に(19)の米油!

高橋

最後にお米の甘味や旨味のようなものが、ちゃんとくる。

太田

(20)の菜種油は、単一品種の菜種を無農薬で栽培して、焙煎しないで搾っている。自然栽培した黒ゴマで作る(23)の油も焙煎していない。最近の油は、料理の味を邪魔しない、自然な香りに仕上げたものが増えているような気がしますが、これも原料に自信があるから、できること。

生江

(22)は焙煎してるけれど、ゴマが主張しすぎず、すっきりしている。

高橋

(21)の向日葵(ひまわり)油はスパイシーな香りがするし、菜種油は土っぽさがあって香ばしく、(24)のえごま油はハーブのような爽快感がある。作物の個性が感じられて、面白いなぁ。

日本料理人・高橋義弘、フレンチシェフ・生江史伸、ワインインポーター・太田久人

米、キビ、どぶろく。酸味がまろやかで、個性はじける味

もととなる酒造りを怠ったり、人工的に空気を送って、酢酸発酵させたりしない。米酢なら酒を造るところからこだわり、自然に任せて、ゆっくりと酢酸発酵させた多彩な酢。

生江

(29)のどぶ酢は、お酒からちゃんと造られているのが、よくわかる。まさに、酸味のあるどぶろくの趣!

太田

この造り手は、塩を使わずに発酵食品を造ったり、料理人として1日1組のオーベルジュもやっていて、めちゃくちゃ面白いんですよ。

生江

サトウキビを栽培して造っている(28)のキビ酢も南の島の潮の香りがして、面白い。

太田

2年間、じっくり発酵、熟成させているせいか、酸味のカドがなく、甘味も感じられて、まろやか。

生江

(26)の米酢も甘味があって、酸っぱいのは苦手だけど、飲めます。

太田

(25)(26)(27)は、どれも米から造られているのに、味わいが違う。有機米を使ったは、米酢で感じたことがないほどフルーティ。

高橋

(27)の赤酢は、熟成香を感じるし。同じ原料でも、蔵元の個性を感じますね。

酢

みりん、砂糖

国産サトウキビと、米から生まれた上質な甘さに脱帽

みりんは、水あめを加えたりせず、もち米、米麹、焼酎だけで糖化、熟成させて搾った本みりんを。砂糖は、原料糖は使わず、日本でサトウキビを収穫して作った、機械で精製されていないものをセレクト。

生江

本みりんは、お酒だよねぇ、酔っ払いそう(笑)。

太田

熟成期間の違いによって、色も甘味も変わっていくのが、面白い。(31)は、上質なシロップみたいに爽やかで、10年熟成させた(33)は、これ、究極のリキュールですよね。

高橋

(33)は、黒糖に近いコクがありますね。

太田

(36)は、まさにその黒糖ですが、色も一般的なものに比べて薄いですし、味も上品。完全無農薬でサトウキビを栽培して製糖していますが、最近はここのように、丁寧に作られた黒糖が増えている気がします。

高橋

人の手で精製された(34)の和三盆は、もう、雑味が一つもない!

生江

(34)が色白の女性なら、(36)は海の男のような魅力があり、どっちもいい。自然な甘味と旨味がある。

日本料理人・高橋義弘、フレンチシェフ・生江史伸、ワインインポーター・太田久人