Eat

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食べる

季節を感じ、願いを込めて食べたい「あんこ歳時記 」。1月、2月のあんこ

雛祭りには草餅、彼岸にはぼた餅、端午の節句には柏餅……。日本には、一年を通して、無病息災や健康長寿を願うたくさんの行事があり、あんこ菓子はそうした行事や季節と密接につながっている。そもそもあんこの材料、小豆は、赤い色が邪気を祓うとされ、古くから縁起が良いとされてきた食べ物。さらに、意匠や用いる材料などにも由来や意味があり、そこには先人の願いが込められている。歴史や由来を知って口にすれば、いつものあんこ菓子がもう一つ、味わい深いものになるはず。

Iillustration: Yumi Uchida / Text: Yuko Saito

1月/睦月

花びら餅に笑顔饅。
縁起の良い菓子で、
幸せな年になりますように。

正月に食べる花びら餅は、「菱はなびら」という宮中の行事食に由来する。宮中では古くから正月に「菱はなびら」が食べられ、「包み雑煮」とも呼ばれた。明治になり、これをもとに作った菓子が、花びら餅。餅で巻いたゴボウは、かつて宮中で元旦に食べて健康長寿を祈っていた押しアユに見立てたもの。また、松竹梅に鶴亀、干支など、一年の幸せを願って、縁起の良いモチーフの菓子が揃う。真っ白な生地に朱点を打った笑顔饅は、その一つ。

笑顔饅
祝賀〈笑顔饅〉

真っ白い薯蕷饅頭に紅を一点差した愛らしい菓子。饅頭には、もともと上に朱の点を入れる風習があり、その意匠の縁起の良さから、正月や祝いの席で食べられるようになった。
花びら餅
正月〈花びら餅〉

丸くのした餅に、紅あるいは小豆色の菱餅を重ね、白味噌の餡と甘く煮たゴボウを挟んだ菓子。餅の代わりに求肥を使うものも。裏千家の家元が、宮中に許しを得て菓子にしたといわれる。

2月/如月

邪気を祓う、
常緑の緑がみずみずしい
菓子で、古を思う。

立春の前日に行う節分は、春の始まりを前に、鬼の嫌いな豆を撒いて、邪気を祓う行事。最近は、この時期に豆大福を売る店もあるが、京都〈柏屋光貞〉には、年に1回、節分の日だけに作る法螺貝餅という菓子がある。また、常緑のみずみずしい葉で、早春を感じようという意味合いがあるのか、葉が落ち切って寂しい正月明けからのこの季節には、椿の葉を用いた椿餅も作られる。平安時代の作品『源氏物語』にも登場する古い菓子。

法螺貝餅
節分〈法螺貝餅〉

邪気を祓うとされる法螺貝を模した菓子で、白味噌あんをクレープのような薄い生地で巻いて法螺貝形とし、ゴボウを差して吹き口を表している。京都〈柏屋光貞〉が作っている。