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村上春樹の私的読書案内『The Stories of John Cheever』

村上春樹が自宅書棚から選んだ、手放すことができない51冊の本。私的な読書案内文と共に。

Photo: Keisuke Fukamizu / Text: Haruki Murakami

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『The Stories of John Cheever』

「こんなに面白いのになあ」と慨嘆しているのだが……

ジョン・チーヴァーの短編小説が61編も収められた分厚い本。ずしりと重い。表紙が赤いので俗に「赤のチーヴァー」と呼ばれている。僕は数年前にこの中から10編ほどを選んで訳し刊行したが、残りの作品の方がだんぜん多い。

そのうちにまたいくつか訳したいと思っているのだが、チーヴァーの作品は日本の読者にはなぜかあまり受けなくて、正直言って本もあまり売れない。僕は昔からチーヴァーが好きで、「こんなに面白いのになあ」と慨嘆しているのだが、いくら僕が慨嘆しても状況は好転しない。もしよかったら手にとって読んでみてください。

チーヴァーはニューヨークのアパートメントに住んでいるとき、毎朝同じ時刻にスーツを着てエレベーターに乗り、地下室にある専用のストレージに入ってそこで執筆をした。夕方になるとまたエレベーターに乗って部屋に上がり、そこでスーツを脱いで寛いだ……ということだ。かなり変わった人だったようだ。

『The Stories of John Cheever』John Cheever/著

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