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村上春樹の私的読書案内『No One Here Gets Out Alive』

村上春樹が自宅書棚から選んだ、手放すことができない51冊の本。私的な読書案内文と共に。

photo: Keisuke Fukamizu / text: Haruki Murakami

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『No One Here Gets Out Alive』

ジム・モリソンの伝記、完訳版が出版されないものか。

ジム・モリソンの伝記、『誰も生きてここから出ることはできない』。この本は1982年にシンコー・ミュージックから『ジム・モリソン 知覚の扉の彼方へ』というタイトルで訳出刊行されたが、残念ながら完訳ではなかった。音楽系の出版社なので、音楽と直接関わりのない部分は端折られているようだ。完訳版が出版されないものか。

僕が最初にドアーズを聴いたのは「ライト・マイ・ファイア」、1967年のことだった。ラジオからこの曲が流れてきたとき。身体にびりびりと電流が走るようなショックがあった。

初めてビーチボーイズの「サーフィンUSA」、ビートルズの「プリーズ・プリーズ・ミー」を聴いたときにもショックは感じたが、「ライト・マイ・ファイア」の場合、更にそのヴォルテージは高かった。以来しばらく僕はドアーズの音楽に夢中になっていた。

ジム・モリソンの少しかすれた独特の声は、60年代後半のあのぴりぴりした空気をそのまま体現していた。

『No One Here Gets Out Alive』Jerry Hopkins' Daniel Sugerman/著

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