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村上春樹の私的読書案内『殺戮へのバイパス』ほか、田中小実昌訳による早川ポケミス全12冊

村上春樹が自宅書棚から選んだ、手放すことができない51冊の本。私的な読書案内文と共に。

Photo: Keisuke Fukamizu / Text: Haruki Murakami

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『殺戮へのバイパス』 ほか
田中小実昌訳による早川ポケミス全12冊

田中小実昌さんが訳したミステリー本を買い集めている。

僕は田中小実昌さんの翻訳が好きで、古書店を回って、彼が訳したミステリー本を買い集めている。主にハヤカワのポケミスだ。小実昌さんの訳の素敵なところは、文章が気取っていないところだ。とてもわかりやすい読みやすい文章で、話をどんどん先に進めていく。だからすらすらと読める。ためしに原文と照らし合わせてみると、むずかしい箇所がしっかり訳せているのに、簡単な箇所がなんかちょっと違っていたりする。そのあたりもいかにもコミさんらしいというか、人柄かもしれない。

僕が持っている12冊のうち、5冊がA・A・フェア(E・S・ガードナーの別名義)、チャンドラーとスピレーンが2冊ずつ。コミさんの訳すA・A・フェアは、読んでいて本当に楽しい。でもたぶん生活のために翻訳をされていたのだろう、作家となってからはすっかり翻訳が出なくなってしまった。

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