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東京で巡る世界の餃子。〜ポーランド、ロシア、モンゴル、ジョージア編〜

世界中で「餃子のようなもの」を探してみると、似ているようで異なる、個性さまざまな料理に行き着いた。現地の食生活や歴史まで見えてくる、東京で世界の餃子旅行をしよう。

photo: Kenya Abe / text: Kahoko Nishimura

ポーランドのピエロギ

挽き肉ではなくパテ状の餡が新感覚

現地ではレストランの格に関わらず、いつでもどこでも食べられるという国民食。定番はジャガイモ入りか肉入りだ。パテ状の肉を詰めたスタイルには、ポーランド人の“もったいない精神”が息づいていると〈ポンチキヤ〉店主の坂元萌衣子さんは言う。

「塊で焼いた肉の余りを無駄にしないためにも役立っているようです」。大学で専攻したポーランド語やその食文化に魅せられ、語学留学中にはさまざまな家庭で料理を学んで歩いた。主力とするポーランドのドーナツ「ポンチキ」のほか、ポーランド料理を振る舞う店は東京でも貴重だ。

ロシアのペリメニ

皮と肉のストレート勝負!ペリメニで冬ごもり

帽子形に包んだペリメニは、農業ができない冬に冷凍保存しておく食料として生まれたもの。国土の広いロシアでは具材や食べ方は地方や家庭で異なる。〈ペリメニキッチン〉店主の小山陽さんはペリメニを自由に解釈。

餡には肉の旨さを味わえるよう、野菜は加えず塩コショウのみで味つけ。毎年独自にブレンドして理想の味に近づけた小麦粉にも、塩と水だけを混ぜて皮を作る。「単に包むためのものではなく、皮自体を“麺”のように味わってほしい」と存在感のあるモチモチ具合に仕上げる。ソースとしてサワークリームをまとわせ、山岳地帯の装いに。

モンゴルのバンシ

挽き肉の発祥地、モンゴルの家庭料理

遊牧民が羊を主食とするモンゴルでは、もちろん水餃子の中身も羊一択。練りたての生地で餡を包み、ゆでたてをいただくのが現地流だ。〈シリンゴル〉でも注文が入ってから皮を作る。「内モンゴルでは水餃子が日常食。モンゴル国では蒸し餃子を好むようです」とは店主の田尻啓太さん。

商社勤務時代にモンゴルに通うようになり、1995年頃の東京では珍しかった専門店を開いた。「中国と同じように黒酢で食べるのが一般的ですが、近頃は若者の間でケチャップやマヨネーズをつけて食べるのも流行っていますよ」と現地情報は常に更新されている。

ジョージアのヒンカリ

手づかみで豪快に!肉汁と香りが溢れ出る

小籠包のようなビッグサイズのゆで餃子。特徴はその食べ方だ。まずは自分で黒コショウを振りかける。小籠包と同様に少しかじって中のスープを飲んでから食べるが、カトラリーは使わずてっぺんの閉じ目を手づかみするのがジョージア流。

突起部分を残すのが一般的で、少年たちは最後に数えて食べた量を競う。現地出身のスタッフも多い〈カフェロシア〉では牛肉と牛の背脂を使った昔ながらの餡を作る。フレッシュコリアンダー、フェヌグリーク、ディル、バジル、クミン、マジョラムなど香菜やスパイスが豊富。背脂から出るこってりした味が調和する。