キッチンABC(池袋)
オム“ドライカレー”ライスのカレーがけ。脳を刺激する味覚に隠された老舗の技
豊島区で1969年創業。〈洋庖丁〉〈ミトヤ〉など人気洋食店のルーツとしても知られる大衆洋食界の至宝。普通のカレーに飽き足らず、パンチを求めスパイシーな黒カレーを開発。ただ白飯と合わせるだけだと色合いがどうも良くない。そこで他店が真似できないものをと、黒カレーをオムライスにかけたのがABC名物オムカレーである。
わざわざ取り上げる理由は、オムライスの中身がなんとドライカレーだから!ライスを色々試した結果「カレーに勝てるのはカレーしかない」と掛け算のドライ&ウェットスタイルに至った。黒カレーのガツンとくるスパイシーさ、卵のホッとする優しさ、後からじんわりとくるドライカレーのピリ辛。この波状攻撃がなんとも心地よい。
ドライカレーはブイヨンで一気に炊き上げ、香りと辛さを均一にする独自製法なので、単体でも混ぜても味にバラつきがない。卵の引き算といい、「脳で覚える味でなきゃだめ」というABCの開発理念が生んだ珠玉の一皿である。
生駒(錦糸町)
カレー×3の中華版濃厚カツカレー?
〈生駒〉の賄いメニューとして10年ほど前に生まれた「排骨カレー炒飯」はすべての要素にカレー粉を用いた夢の一皿だ。ラーメンに使う中華ベースに味噌、調味料、カレー粉を加え、片栗粉でとろみをつけたカレーは、スパイシーなのに軽やか。
一方、カレーによく絡むよう強火でパラパラに炒めたカレー炒飯と、衣にしっかりカレー粉をまぶしカラッと揚げたパーコーは、町中華らしい濃厚な味つけ。そもそも店主のカツカレー好きから生まれたメニューと聞くが、それどころではない強烈なパンチ力だ。
モンタナ(吉祥寺)
カリーつけ麺×キーマで雑炊感覚
もともとタイカレーやドライカレーを提供するカレーカフェだったのが2018年「カリーつけ麺」のお店へと変貌。理由は簡単「オーナーがラーメン好きだったから」。
一番人気の「モンタナカリープレート」はカリーつけ麺とドライカレーが一緒に楽しめるドライ&ウェットな一皿。濃厚魚介系のカレー汁、自家製ローストポークとつけ麺だけでも完成度は高いが、ドライカレーと合わせることでお子様ランチのようなワクワク感が広がる。ディレイ、ファズ等サウンドエフェクト名で辛さが選べるのも楽しい。
欧風カレー ソレイユ(麹町)
潔い見た目と裏腹に、奥深い味の対比
カルデラ湖のごとくドライカレーは山の上に鎮座、麓にはカレーソース。この印象的なスタイルは店主が修業した欧風カレー店〈オーベルジーヌ〉で生まれ、今ではこの店だけのものだ。
フレンチの技法を駆使しつつも、2つのカレーの味と食感を大きく変えているのが面白い。外側のカレーソースは舌触り滑らか、毎日継ぎ足し味に奥行きを加えている。一方のドライカレーは野菜にリンゴを加えて甘酸っぱい仕上がりに。辛さはカレーソース側で選べ、両方を組み合わせることで味が自在に調節できるのだ。