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月島〈Cuishe Mezcalerian〉で学ぶメスカル。品種の違いとテロワールを楽しむメキシコ伝統酒

こだわりを持った造り手による多彩なスピリッツの登場は、それらをベースとするカクテルにも豊かな広がりをもたらしている。今押さえるべきジンについてバーテンダーの吉川優さんに教えてもらった。

photo: Yu Inohara, Jun Nakagawa / text: Emi Fukushima

独特のスモーキー感と複雑な旨味で、近年ぐんぐん知名度を上げているのがメキシコ生まれのスピリッツ、メスカル。アガベと呼ばれるアメリカ大陸原産の多肉植物から造られている。テキーラも同様にアガベを原料とする蒸留酒だが、メスカルは「より多様性を楽しめるお酒」だと、〈クイシェ・メスカレリア〉店主の吉川優さんは話す。

「テキーラはブルーアガベという1品種のみで造ることが決められていますが、メスカルは、オアハカをはじめとするメキシコ国内の9つの州で生育したアガベを使用していれば、品種に規定がないのが特徴なんです。エスパディンを中心に50種類程度のアガベが単一またはブレンドして使われていて、品種や産地によって仕上がりが異なる点が面白いところ。スモーキーなお酒という印象が強いですが、それ以上にアガベの品種ごとの味の違いを楽しんでもらえたら」

まず、この6本!

月島〈Cuishe Mezcalerian〉店内とメスカル
(1)「メスカル アハル」。デュランゴ州原産で、アガベはセニーソ。発酵感を思わすクリーミーな味わい。
(2)「ラメディダ エスパディン」。柔らかくしっかりとした味わい。
(3)「デルンベス サンルイスポトシ」。サン・ルイス・ポトシ州に生育するサルミアーナというアガベを使用。辛味のないハラペーニョのような青っぽさが持ち味。
(4)「アリプス サン・ホアン」。47.5度と度数はやや高めだが、リキュールにも負けないしっかりした味わいが特徴。
(5)「サンコスメ」。エスパディンを使用。バランスが良くカクテルのベースにも適している。
(6)「ヴォルティセ エスパディン40」。アガベはオアハカ州のエスパディンを使用。旨味とスモーク感が強い。

日本ではここ数年耳にするようになったメスカルだが、実はその歴史は古く、400年以上前にまで遡る。
「かつてはアガベの生産者の家の隣に設けた蒸留所で造って、家族や村内の身近なコミュニティ内で消費されるローカルなお酒だったそうです。世界に広まり始めたのは2010年以降。発信力のあるアメリカ人や人気のバーでカクテルに使用されたことから広まっていきました」

そうした背景ゆえ、現在も伝統的な製法を貫く小規模な蒸留所が多い。
「独特のスモーキーさの由来でもあるアガベの蒸し焼きの工程は、地面に掘った穴に埋めて行われ、搾汁の工程も、回転式の石臼をロバやラバに牽引させたり木槌などを使って粉砕したりして行われる。一つ一つ手作業で造られていることも、蒸留所ごとの個性が際立つ理由ですね」

吉川さんいわく「メスカルの持つ多様性は、カクテルのベースとしても生きる」とのこと。こう続ける。
「旨味やスモーキー感が強いものはマルガリータなどでシンプルに仕上げたり、青っぽさが強いものは野菜やメキシコならではのサルサと組み合わせたり。アガベにより味わいが異なるメスカルだからこそ、選ぶ楽しさとそこに組み合わせて変化する面白さを味わってほしいです」

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