映画好き門間雄介へ7つの質問
Q1
あの監督の虜になった名シーンは?
門間雄介
鈴木清順監督の『関東無宿』にて、ヤクザが斬り殺された瞬間に賭場のふすまが倒れ、真っ赤な背景がおびただしい鮮血のように広がるシーン。あんなものを10代の頃に観て、虜にならないわけがありません。
Q2
好きな監督のベスト作品は?
門間雄介
橋口亮輔の『ハッシュ!』、レオス・カラックスの『汚れた血』、ポン・ジュノの『殺人の追憶』、ポール・トーマス・アンダーソンの『マグノリア』、アルフォンソ・キュアロンの『ゼロ・グラビティ』、山下敦弘の『リンダ リンダ リンダ』など。
Q3
好きな監督のイマイチだった作品は?
門間雄介
無回答。
Q4
最近になって魅力的に感じるようになった監督は?
門間雄介
新作『朝が来る』は、時として器からはみ出るほど情感過多だった河瀨直美監督の演出が、原作という器を借りることで的確になされた作品。感動的でした。
Q5
あの監督に撮ってほしい、意外なテーマは?
門間雄介
マーティン・スコセッシ監督が映画化する『半沢直樹』、公文書がなぜか消えたり書き換えられたりする怪現象をM・ナイト・シャマラン監督の手で、など?
Q6
個人的に今気になっている監督は?
門間雄介
アリ・アッバシ、ベネディクト・エルリングソン、アンドリュー・ヘイ。もっと評価されるべきだと感じるのは万田邦敏、山内ケンジ、藤田容介などです。
Q7
将来が楽しみな次世代の監督は?
門間雄介
グレタ・ガーウィグ、アリーチェ・ロルヴァケル、セリーヌ・シアマ、デヴィッド・ロウリー、サフディ兄弟、濱口竜介、三宅唱、石川慶、金子由里奈。
2010年以降の「この監督のこの一本」。
トッド・ヘインズの『キャロル』
偏見や差別の先に、彼女たちの純粋な愛を描いた。
セクシュアルマイノリティたちが次々に、真に自分たちの映画を撮り始めた1980年代の終わり頃から、トッド・ヘインズは自身のアイデンティティのための作品を作ってきた。そして“敗北”してきた。
彼の映画ではたびたび、自らの性的アイデンティティを貫こうとする登場人物が、そのために社会の偏見や差別の犠牲になる。ヘインズが伝えてきたのは、その悲劇と少数者たちの悲哀だ。
彼が2015年に監督した『キャロル』も大筋では同じかもしれない。1950年代のニューヨークで、互いに惹かれ合う2人の女は、保守的な価値観に支配された社会の犠牲になる。けれどもヘインズは、彼女たちの物語を悲劇として終わらせなかった。一度は離れ離れになった2人がゆっくりと、徐々に距離を縮め、その視線を交わす美しいラスト。
2010年代になってようやく、ヘインズはセクシュアルマイノリティの純粋な愛を、彼女たちや自分たちの“勝利”を、このようにして描くことができたのだ。
声なき人の声を代弁し、映画を作り続けてきたヘインズの名とともに、ずっと語り継がれていくべき作品。