ひたすら炊き込むクリームは、小さくても大満足の濃厚さ
缶入りクッキーが予約必須の人気を誇る姉妹で営む洋菓子店は、シンプルな生ケーキの味にも定評がある。注文すると、小さめのシュー皮に、倒れそうなほどクリームを絞ってくれるシュークリームは、その代表選手。生クリームと合わせていても、残る口金の跡が、しっかり炊いたパティシエールだと教えてくれる。
「うちのケーキは小ぶりなので、“ちっちゃいけど、すごい満足度だね”っていうシュークリームにしたかったんです。味の濃い那須御養卵を使って、濃厚でコクのあるパティシエールに仕上げ、しっかり焼いたシュー皮に挟んでいます」と、パティシエの新田あゆ子さん。
「うちのカスタードは煮詰めが命」。材料を合わせたら、火の当たりが均一になるよう、絶えずゴムベラで混ぜながら、鍋そのものも動かし続ける。炊けたら、生地が黄色く、重たくなるまで、さらに5分ほど煮詰めてもう一つ濃厚に。重労働だが、「なんといっても菓子屋のクリームですから。いまでもパティシエールを炊く作業は大好きですよ」。
新田さんには、忘れられないパティシエールがある。学生時代カフェ巡りをしていた時、とある喫茶店で口にしたミルフィーユのそれだ。
「キルシュ(サクランボのお酒)が入っていたんですが、キルシュ一つでこんなにも変わるクリームなんだって、改めて感動しました。いまでも炊いていると、無性にキルシュを入れたくなる時があるんですけど、うちのお菓子は子供にも食べてもらいたいので、グッと我慢しています」