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〈cero〉髙城晶平の捨てられない本。『しのは きょろきょろ』

何年も手放すことができない、何冊も買ってしまうような、ミュージシャン・髙城晶平さんにとって大切な一冊。本について語る時、そこには人生の歩みと、本が紡ぐ新たな物語が刻まれている。

photo: Satoko Imazu / text: Nozomi Hasegawa / text&edit: Chisa Nishinoiri

大人になって実感する、谷川俊太郎の言葉の力

多くの本を手放してきたけれど『しのは きょろきょろ』は幼い頃からずーっと棚に置いてある、一番古い本ですね。子供時代に文字の多い本を初めて読んだ証しとして大切にしていたんじゃないかな。

大人になって読み返したら、当時は気づかなかった良さがありました。5歳のしのがデパートを探索する話なのですが、途中、男の子が落としたお金をおじさんがくすねるシーンがあるんです。しのに注意されて、走るように去っていくおじさんを見て「しのはなんだかすこし、そのおじさんが、かわいそうなようなきがした」とあって。

おじさんが泥棒をするまでの経緯が想像できる。童話だとしても、谷川俊太郎の作品にはそんな目配せがちゃんとあるんですよ。今では僕の子供もお気に入りの一冊です。

『しのは きょろきょろ』
お母さんが美容室にいる間、5歳のしのは地下の食品売り場からおもちゃ売り場へと、デパートを一人で探検する。作/谷川俊太郎。絵/和田誠。あかね書房。