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宮武徹郎、内藤祥平、恩地祥博。あの人はどんなビジネス書を読み込んでいる?

あの経営者の愛読書は?何度も読む理由とは?刻一刻と変化するマーケットで生き残っていくためには、新しい気づきを与えてくれる存在が必須。業界を牽引するビジネスパーソンが薦める本当に役立つビジネス書、揃ってます。

Text: Kanta Hisajima

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海外の最新テック事情なら
この人に聞け?
宮武徹郎

ビジネスのこれからを読み解くために。

10年前ほど前のまだ僕が大学生だった頃に、ゲイリー・ヴェイナチャックがしゃべっている動画をYouTubeで偶然見つけました。ツイッターやインスタグラムが一般にも浸透し始めて、SNSが身近になりつつあった当時。これから起こるイノベーションを的確に言い当てているんです。

まだ見ぬ未来にワクワクさせられ、ゲイリーの思考をより深く知りたくなって購入したのがこの『ザ・サンキュー・マーケティング』。SNSの台頭を“カルチャーシフト”と呼び、これからのマーケティングは変わると書かれていました。

企業から消費者へ、一方通行のプロモーションでモノが売れる時代は終わり、直接的に自社商品をPRするのではなく、バリューを提供し、消費者との信頼を築くことが大切。そしてその関係性を構築するためのツールこそがSNSだ、と。なぜここまで未来を予測できるのか、という問いにも彼は答えています。

ビジネスの流れを読むのではなく、次の“カルチャーシフト”を予測する。SNSを例に挙げても、新しい文化が隆盛し、その中にビジネスが生まれている。だから僕たちは、知らない世代のことを知らなくてはいけない。

Z世代は何を見てして育っているのか、さらに若いα世代の常識は自分とどう違うのか。この本を読みながら、常に僕なりに未来を考え、次のカルチャーを予測しています。

生産から流通、販売まで。
日本の農業で世界と戦う。
内藤祥平

経営戦略の真理は至ってシンプルだった。

これまでハマるビジネス書に出会っていなかった僕ですが、この本は最後まで一気に読んでしまいました。ほかのビジネス書と異なる、軽快な語り口は押しつけがましくなく、「戦略を練るのは面白い」というシンプルな経営の真理を思い出させてくれました。

戦略とは、他社との競争優位性を定義し、分析や裏づけに基づいて経営の舵を取るとても重要なものです。それは過酷な競争だけど、決して戦争じゃない。だから死ぬことだってない。そんな「所詮ビジネス」という本書のスタンスが、コンサル出身の頭でっかちな私には新鮮で心地よかった。肩の力を抜いて読み込んでいくと、ここで書かれている目標と戦略の関係が見えてきます。

企業としての目標はゴールであり、それを達成するためのアイデアが戦略である。そして私たちが目指しているのは、日本の農作物を世界で売ること。だから農作物の生産を増やし、国内外への流通をさらに円滑化する。そのためには何ができるのか。経営者として考え、仲間に伝えることが重要です。

そのアイデアを社内、生産する人、販売する人に共有していく。そういう思いの伝播が企業をチームとして結びつけ、ゴールに向かうためのストーリーになり、結果として、優れた戦略となる。読み返すたびに、次に何を意識するべきかを教えてくれます。

これからのアパレルを考える。
業界に新たな風を吹き込む若手。
恩地祥博

ビジネスが環境の負担であってはならない。

サステイナビリティという言葉を聞くようになって久しいですが、私たちが身を置くファッション業界は、まだまだ課題が山積み。ただ、自分の子供が生まれた時、これからの地球のために本気で行動を起こさなくてはと思うようになりました。日常生活はもちろん、ビジネスの領域で僕は何ができるのか。それを知るために買ったのがこの本。

ビル・ゲイツが科学や経済、政治の専門家と協力し、気候変動を食い止めるための施策を示しています。人間が生み出すCO2は年間510億トン。途方もないこの数字を、ゼロにするためには、技術革新はなおのこと、個人の意識も関係しています。来るべき未来のために、皆が一丸とならねばなりません。

まだまだ大量生産・大量廃棄が続くファッション業界。僕たちの事業をこれからも拡大させ、そういう業界の当たり前を変えるきっかけになりたい。この本を読んでからは、そういう考えが常に頭の中にあります。

これから取り組んでいきたいのは、お客様に求められたものを過不足なく作る完全受注生産への移行と、アクセサリー製造過程でのCO2排出量を実質的にゼロにすること。持続可能な新しい技術を用いながら、ファッションとしての楽しさも維持する。その姿勢をプロダクトに反映させながら、「地球のために」と思える人を少しでも増やしたいです。

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