亜細亜割烹 蓮月(乃木坂)
羊肉とパクチーが上品に香る、世界チャンピオンの味
青山墓地に近い静かな住宅街にある小さな餃子専門店〈亜細亜割烹 蓮月〉。お店を切り盛りする品川祐司さんは、中国遼寧省瀋陽(しんよう)市出身の料理人からノウハウを学び、2012年に、4年に1度開催の中国料理世界大会で優勝した実力者だ。
名物の「羊肉の手作り水餃子」は、モチッとしつつも適度に軟らかく、食べ疲れない程度の絶妙な弾力の皮に包まれた旨味たっぷりの羊肉が特徴。臭みもなく、ほのかに香るパクチーとネギ油が爽やかな後味をもたらすからか、ついつい箸が止まらない。土地柄、仕事帰りに家族への手みやげに持ち帰る人も多いのだそう。老若男女に愛されるバランスの良い味だ。
6個770円。寸:6cm、ヒダ:無、皮:普、具:普。
哈爾濱餃子(堀切菖蒲園)
夫婦の人柄を閉じ込めたような、優しく滋味深い水餃子
中国黒龍江省哈爾濱(ハルビン)市出身のご主人、林江夫さんと奥さんの金婉平さんが夫婦二人三脚で作る、本場ハルビン仕込みの餃子。餡をのせた皮をパタンと閉じ、最後に両手で優しく包み込むように仕上げる水餃子。ゆでたての皮はもっちりシコシコの食感。
全部で6種類ある水餃子のうち、奥さんも大好きというトマト水餃子をぜひ。餡のベースは店で叩いてミンチにしているという豚肉。豚の甘い脂と、凝縮したトマトの酸味と甘味が混ざり合い、まるで濃厚なパスタソースを食べているようなジューシーな旨味がドバッと溢れ出る。肩を寄せ合って餃子を作る夫婦の姿に、ついもう一皿注文したくなる。
5個350円。寸:7.5cm、ヒダ:無、皮:普、具:普。
パオ 愛宕店(虎ノ門)
スープの寒天と隠し味の味噌で、肉汁溢れる水餃子
この道29年、ベテランの店主・加藤正人さんが得意とするのは、素材の旨味をあるがままに引き出す家庭的な台湾料理。馬蹄銀の形に整えた水餃子には隠れた工夫がたくさん。皮を作る時、小麦粉にお湯を加えてこねるため薄く引きのばすことが可能。そのためいくつ食べてももたれない口当たりともちもち感の両立に成功。
口の中で肉汁が広がる餡は粗めにカットしたキャベツと粗挽きの豚肉を1:1で配合。隠し味に白味噌を加え、さらにスープの寒天を入れることで小籠包さながらのジューシーさ。釜から上げる際、繊細な薄皮の水餃子が破れないように、厨房での加藤さんの目つきは真剣そのもの。
6個650円。寸:6.5cm、ヒダ:4、皮:薄、具:多。
本格水餃子専門 瓦奉店(新丸子)
代々受け継いできた満洲の家庭の味をご堪能あれ
〈瓦奉店〉のルーツは満州にあり。屋号は祖父が満洲へ赴任の際、駅長を務めていた駅名から。現地のお手伝いさんが作る大陸の味に惚れ込んだ祖母が水餃子をはじめとする家庭料理を習得。現在は孫の鈴木ゆりさんがレシピを受け継いで提供する。
満洲の水餃子は、なにより素朴さが特徴。日本ではお馴染みのニンニクもニラも入れないのが基本で、ショウガをベースにした優しい口当たりだから何個でも食べられる。水餃子とともに生のニンニクをかじるのが昔ながらの本場の流儀。満洲の家庭の味に惹かれて店に足を運ぶ中国人の常連さんの中には、生のニンニクを持参する方もいるそう。
8個850円。寸:5cm、ヒダ:無、皮:厚、具:普。