「描く、消す」が繰り返された、動きだす予感がする絵画
朝長弘人の《遠地》
朝長弘人との出会いは、知り合いのコレクターに紹介していただいたことでした。それまで彼の作品はSNS上でしか見たことがなかったのですが、作品を眼前にすると、画面上で見る以上の力強さに惹きつけられました。
直接詳しく話を聞くと、彼は絵具で描いたり消したりを何度も繰り返しながら独特な絵肌を作り出しているそうで、とても驚きました。距離感を纏(まと)った対象物を観ていると、漂い振動する絵の中に引き込まれていくような感覚に陥り、また、静かに固定されているはずの絵画が動きだすような気配さえ感じるのです。
(KOSAKU KANECHIKA/金近幸作)