一枚の絵の中に流れる時間を見る作品
カダール・ブロックの《cleaning brushes, purple blue》
10年以上前から個人的に注目しているアーティストです。彼の絵画制作のプロセスは、具象絵画をキャンバスから外し、削り落とすことから始まります。下地を塗った後に表面を研磨してテクスチャーを表面に作り出し、そこにイメージを描き、また研磨するという工程を繰り返します。その工程を経ることで、自身の過去を再解釈し前に進んでいくのです。
その営みは、まるで記憶と経験によって形作られた私たちの人生を垣間見るようです。一見何もないように見えますが、幾重にも重なる層に時間の集積や記憶等、思いを馳せられる作品だと思います。(KOKI ARTS/石橋高基)