さても皆様、お久しゅうございます。おお、あの審査会が戻ってきたのかと思ったあなた、違います。今回は、四天王自身が日頃から愛してやまぬ自慢のあんこを3つずつ披露するという、かつてないスタイル。
いってみれば、あんこ愛あふれる茶話会といったところ。箸休めもご用意しております。ささ、始めましょう。
秋元康
では、不動の定番手みやげ、〈御菓子司 中里〉の揚最中(秋1)から。皮の塩味がいいんですよ。(食べて)うーん、やっぱりおいしい。
佐藤可士和
以前、秋元さんにいただいて以来、好きになりました。
松任谷正隆
好きです、僕も。
秋元
甘いものが苦手な人でも食べられますよね。
酒井順子
今、甘じょっぱい味が流行ってますけど、こちらは先駆者ですね。東京駅の大丸にもお店があるので、たまに買っています。
松任谷
ゴマ油の香ばしい香りにもそそられます。
秋元
2日目になると、しんなりするのですが、オーブントースターやフライパンで炙ると、パリパリ感が戻りますよ。
あんこと塩味は切っても切れない仲
———次なるあんこは、松任谷さんの〈松島屋〉の豆大福(松2)。実は、今日(審査会当日)は定休日でしたが、特別に作ってくださったんです。
4人
さすが、BRUTUS!
秋元
豆大福は豆でしょう。赤エンドウ豆で決まると言ってもいい。
佐藤
豆の塩加減がいいですね。
酒井
あんこもいいですねぇ。
松任谷
バランスだと思います。実は、いろんな豆大福を食べてみたんです。そして、最後まで迷った。決め手は後味。すーっと消えていく感じがいいなと思って。
秋元
相変わらず、予習を?
松任谷
僕、どちらかというと洋菓子派で、あんこの世界に詳しくないんです。なので猛勉強しました。
秋元
ちょっと小ぶりでしょうか。おいしいですね。
酒井
私、〈松島屋〉の豆大福、初めてです。おいしいです。豆大福といえば、京都の〈出町ふたば〉の名代豆餅を作る映像があるんですけど、時々見てしまいます(笑)。
豆大福作りって、豆を均一に入れなくてはいけないから難しそうだなと思いながら。
松任谷
すみませーん。ラップありますか?持ち帰りたいです。
———続きまして、酒井さんの推しあんこ、いきましょう。
酒井
私は〈たいやき わかば〉のたいやき(酒1)からです。
これは、子供の頃、父がおみやげによく買ってきてくれたものなんですけど、初めて食べた時は、こんなにおいしいたい焼きがあるのかと思いました。
ほかのたい焼きとは全然違う。皮の薄さと餡の塩味と、小ぶりでむっちり筋肉質な感じが好みで。
秋元
皮がおいしいね。
佐藤
薄さがすごくいい。
松任谷
僕、小学生の頃から食べてますよ。うちの学校では運動会の時、クラス対抗競技があって、勝った組の担任がこれを買ってきて、みんなで食べられるんです。
佐藤
あ、それ、今もです。
松任谷
そうなんだ。
佐藤
松任谷さんの頃からの伝統が引き継がれているんですね。
酒井
いつも並ぶんですけど、一丁、一丁焼くのを見ているだけで、並ぶのも苦になりません。
秋元
僕は大判焼きも大好きなんですが、たい焼きばかりがいつも注目されて悔しいですね。
———では、佐藤さんのおはぎ、いきましょうか。
佐藤
〈芦屋樂膳〉の玄樂おはぎ詰め合わせ(佐1)です。
松任谷
これ、すごいね。華やか。
佐藤
芦屋のお店で、僕が行きつけの芦屋東山店は小さいお店で、土・日・月しかやってなくて、すぐに売り切れちゃう。
ご主人が黒米とか黒糖とか黒にこだわっているそうで、精製されていない、体に良い素材だけで作っています。
僕はスタンダードなつぶあんが好きなんですけど、変わったおはぎも楽しくて、これだけ揃うとかわいいし、ビジュアル的にもインパクトがあるから、手みやげにもぴったりだと思います。
松任谷
ピスタチオ、おいしい。
佐藤
変わりダネって外しそうだけど、どれもよくできてるんです。
松任谷
あんずのおはぎ、初めて食べたけど、僕の趣味とぴったり。いいですねぇ。気に入りました。
秋元
コンサバティブなのか、きな粉がすごくおいしく感じる。
———自家焙煎したきな粉だそうです。
酒井
確かに、きな粉もおいしい。あんずの甘さと酸っぱさもいい。
———では2巡目。秋元さんの番です。〈トミーズ〉のあん食(秋2)を。
秋元
これは神戸発。地元のタクシーの運転手さんに教えてもらったものですが、今はお取り寄せもできるようです。いろいろな種類があるのですが、このあん食が一番。
———バターご用意してます。
佐藤
バターでぐっとおいしくなる。
酒井
バター、合いますね。
秋元
あんことバター、合うんです。
松任谷
今回、僕、猛勉強して発見したのが、パンとバターとあんこという組み合わせです。皆さんはとっくにご存じだったかもしれないけど、僕はひたすら試して辿り着いた。
これって、どうしておいしいのかと思ったら、いわゆるモーニングの発想なんですよね。だから、コーヒーが最高にマッチする。
秋元
名古屋のモーニングの小倉トーストもそうですよね。
プロ仕様のどら焼き!?その良さがわかるのか
———続きまして、松任谷さん。
松任谷
これはね、プロ仕様のどら焼きです。シロウトにはこのおいしさはわかりにくいと思う。
酒井
それは……。
秋元
気をつけないと(笑)。
松任谷
金沢の〈豆半〉のどら焼き(松1)です。
事前にいろんなあんこを食べて、すーっと消えていくのが自分の好みだとわかったんだけど、このどら焼きは残るんですよ。
でも、よくよく食べ込むうちに、あんこの真髄は皮の渋味にあるなと思い至った。その渋味が残るところがやみつきになったんです。
秋元
なるほど。
松任谷
実は、第一印象はあまり良くなかったんです。でも、食べれば食べるほど味わい深い。だから、味がわかる人に贈りたい。
酒井
これ、コーヒーがすごく進みます。実は私、和菓子作りが趣味だったんですけど、どら焼きの皮って、上から垂らして、自然に丸くして焼くんです。
糖分が入っているから茶色く色がつく。こんなに薄い色だということは、糖分が少ないってことだと思うんです。それで、あんこの味を引き立てているんですね。
———どら焼きの皮には、昆布だしと醬油を加えているそうです。
酒井
キャラメリゼというのでしょうか、茶色く焦げ目がついた皮とは、また違ったおいしさがありますね。
佐藤
プロの発言だな(笑)。
———次なる推しあんこは酒井さん。
酒井
〈徳太樓〉のきんつば(酒3)です。
松任谷
甘すぎず、上品。
秋元
ほんと、品が良い。
佐藤
程よい甘さ。
酒井
炭水化物の比率を極限まで少なくした、まさにあんこを楽しむためのお菓子ですよね、きんつばって。
秋元
あんこはやはり小豆の味ですね。豆の味をどのくらい残すかが、それぞれの味を決めるわけです。このきんつばは、今まで食べた中で一番、豆の味がします。
佐藤
あんこそのものという感じ。
酒井
私、きんつばを作るのが一番好きなんです。あんこを切って小麦粉の生地をつけて、一面を焼いたら次の面を焼いて……と、6面すべて焼いていくのが楽しい。
佐藤
和菓子を作ってたなんて、初めて聞いた(笑)。
秋元
いつ頃のこと?
酒井
高校生の時。
秋元
洋菓子の華やかさと対極にあるような気がするけど……。
酒井
そうなんです。辛いことがあった時に、効きます(笑)。
秋元
なかなか渋いですよね。
松任谷
このきんつばは凜としてますよ。昔、武士だった人が作っているみたいな。
———それでは、秋元さんリコメンドの〈清水屋〉の黒大奴(秋3)です。
秋元
それでは、プロ仕様のあんこ玉です(笑)。
酒井
プロならではの味わい。
秋元
有無を言わせない、豪速球の“あんこ”って感じがしませんか。
酒井
形も美しい。おいしいです。
秋元
どんとくるでしょう。
酒井
あんこを羊羹で包んであるというのがすごいですね。しかも、昆布が練り込まれているんですね。
秋元
よく行く天ぷら屋さんのデザートで出てくるものです。天ぷらのあとには、この強さがちょうどいいのです。これだけ単独だと強いですよね。あんこの原種のような感じがしませんか。
佐藤
チョコに近い感じがします。
松任谷
寝る前に食べたい。
酒井
ナイトキャップにいい。
佐藤
お酒に合いそうですね。
秋元
ブランデーとかウイスキーとか、合いますね。