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“手みやげ四天王”による、推しあんこ談義。秋元康、松任谷正隆、酒井順子、佐藤可士和 〜前編〜

本誌の手みやげ特集やお取り寄せ特集でお馴染みの、秋元康さん、松任谷正隆さん、酒井順子さん、佐藤可士和さんの四天王が、長〜いモラトリアムを経て戻ってきてくれました。今回は、各自、マイベストあんこ手みやげを携え、「わがあんここそ天下一」と自慢しつつ、突っ込み合いつつ、あんこ談議に花を咲かせます。後編はこちら

初出:BRUTUS No.954「なにしろあんこ好きなもので。」(2022年1月11日発売)

Photo: Masanori Ikeda(YUKAI) / Text: Michiko P. Watanabe, Ai Sakamoto(data) / Styling: Chizu Nakayama / Cooking: Namie Omi

さても皆様、お久しゅうございます。おお、あの審査会が戻ってきたのかと思ったあなた、違います。今回は、四天王自身が日頃から愛してやまぬ自慢のあんこを3つずつ披露するという、かつてないスタイル。

いってみれば、あんこ愛あふれる茶話会といったところ。箸休めもご用意しております。ささ、始めましょう。

〈御菓子司 中里〉揚最中、〈トミーズ〉あん食、〈清水屋〉黒大奴
秋元's CHOICE
(秋1)〈御菓子司 中里〉の揚最中:北海道十勝産の小豆を練り上げたつぶあんを、上質なゴマ油でカラッと揚げた最中の皮でサンド。最後にふわりとまとわせる伊豆大島産の焼き塩が甘味の中に絶妙な塩味を生む。
(秋2)〈トミーズ〉のあん食:生クリーム入りのリッチな生地に、北海道産小豆を使ったつぶあんを混ぜ合わせて食パンに。そのままでも美味だが、トースターでこんがり焼いてバターをのせるのが秋元さん流。
(松3)〈清水屋〉の黒大奴:昆布を練り込んだツヤツヤの羊羹で、滑らかなこしあんをくるんだあん玉。餡には北海道産小豆を使用している。羊羹と餡、トッピングのケシの実の異なる食感も楽しい。

秋元康

では、不動の定番手みやげ、〈御菓子司 中里〉の揚最中(秋1)から。皮の塩味がいいんですよ。(食べて)うーん、やっぱりおいしい。

佐藤可士和

以前、秋元さんにいただいて以来、好きになりました。

松任谷正隆

好きです、僕も。

秋元

甘いものが苦手な人でも食べられますよね。

酒井順子

今、甘じょっぱい味が流行ってますけど、こちらは先駆者ですね。東京駅の大丸にもお店があるので、たまに買っています。

松任谷

ゴマ油の香ばしい香りにもそそられます。

秋元

2日目になると、しんなりするのですが、オーブントースターやフライパンで炙ると、パリパリ感が戻りますよ。

あんこと塩味は切っても切れない仲

———次なるあんこは、松任谷さんの〈松島屋〉の豆大福(松2)。実は、今日(審査会当日)は定休日でしたが、特別に作ってくださったんです。

〈豆半〉どら焼き、〈松島屋〉の豆大福、究極のあんトーストセット
松任谷's CHOICE
(松1)〈豆半〉のどら焼き:しっとり軟らかな生地には、味が濃厚な卵「美珠卵」の黄身とバター、醬油、昆布だしを使用。小豆の風味豊かなあんこと味わえば、甘味と旨味の絶妙なバランスを感じられる。
(松2)〈松島屋〉の豆大福:東京三大豆大福の一つ。北海道石狩産の小豆に、富良野産の赤エンドウ豆、宮城県産もち米・みやこがねと素材にもこだわる。赤エンドウ豆の塩味が、甘さ控えめな餡と合う。
(松3)究極のあんトーストセット:〈フォション〉のパン・ド・ミに、〈エシレ バター〉の有塩と、〈トラヤあんスタンド〉のあんペースト2種を組み合わせた松任谷さんのオリジナル。「セットにして贈りたい」

4人

さすが、BRUTUS!

秋元

豆大福は豆でしょう。赤エンドウ豆で決まると言ってもいい。

佐藤

豆の塩加減がいいですね。

酒井

あんこもいいですねぇ。

松任谷

バランスだと思います。実は、いろんな豆大福を食べてみたんです。そして、最後まで迷った。決め手は後味。すーっと消えていく感じがいいなと思って。

秋元

相変わらず、予習を?

松任谷

僕、どちらかというと洋菓子派で、あんこの世界に詳しくないんです。なので猛勉強しました。

秋元

ちょっと小ぶりでしょうか。おいしいですね。

酒井

私、〈松島屋〉の豆大福、初めてです。おいしいです。豆大福といえば、京都の〈出町ふたば〉の名代豆餅を作る映像があるんですけど、時々見てしまいます(笑)。
豆大福作りって、豆を均一に入れなくてはいけないから難しそうだなと思いながら。

松任谷

すみませーん。ラップありますか?持ち帰りたいです。

———続きまして、酒井さんの推しあんこ、いきましょう。

〈たいやき わかば〉たいやき、〈光悦堂〉御土居餅、〈徳太樓〉きんつば
酒井's CHOICE
(酒1)〈たいやき わかば〉のたいやき:一尾ずつ丁寧に焼き上げられる天然もの(一丁焼き)。パリパリした薄皮の下には、北海道産小豆を使い塩気を効かせたあんこが頭からしっぽまでぎっしり詰まっている。
(酒2)〈光悦堂〉の御土居餅:豊臣秀吉が築いた土塁「御土居」を模して店主の橋本秀正さんが考案。豆大福にふんわりときな粉をかけている。滋賀県産のもち米を使った羽二重餅が軟らかく、食べ飽きない。
(酒3)〈徳太樓〉のきんつば:北海道産小豆を使った自家製餡が味の決め手。丁寧に煮て灰汁を抜き、よく晒すことでくどくない甘味に仕上げている。「酒の肴にする方もいるほど」と女将の増田真理さん。

酒井

私は〈たいやき わかば〉のたいやき(酒1)からです。
これは、子供の頃、父がおみやげによく買ってきてくれたものなんですけど、初めて食べた時は、こんなにおいしいたい焼きがあるのかと思いました。
ほかのたい焼きとは全然違う。皮の薄さと餡の塩味と、小ぶりでむっちり筋肉質な感じが好みで。

秋元

皮がおいしいね。

佐藤

薄さがすごくいい。

松任谷

僕、小学生の頃から食べてますよ。うちの学校では運動会の時、クラス対抗競技があって、勝った組の担任がこれを買ってきて、みんなで食べられるんです。

佐藤

あ、それ、今もです。

松任谷

そうなんだ。

佐藤

松任谷さんの頃からの伝統が引き継がれているんですね。

酒井

いつも並ぶんですけど、一丁、一丁焼くのを見ているだけで、並ぶのも苦になりません。

秋元

僕は大判焼きも大好きなんですが、たい焼きばかりがいつも注目されて悔しいですね。

———では、佐藤さんのおはぎ、いきましょうか。

〈芦屋樂膳〉玄樂おはぎ、〈パンタイム〉あんバター、〈シャトレーゼ〉苺のクリームあんみつ
佐藤's CHOICE
(佐1)〈芦屋樂膳〉の「玄樂おはぎ」6個入れ:黒米のプチプチとした食感が魅力のおはぎ。常時10種類ほどが揃う。写真右上から時計回りに、栗モンブラン、あんず、ピスタチオ、粒あん、丹波黒(きな粉)、抹茶。
(佐2)〈パンタイム〉のあんバター:小さい丸形のフランスパンに、北海道産小豆とテンサイ糖で作ったつぶあん、そして国産無塩バターを挟んだ、元祖あんバターサンド。最後に振りかけるひと塩が味の決め手!
(佐3)〈シャトレーゼ〉の苺のクリームあんみつ:紅ほっぺをフィーチャーしたクリームあんみつ。つぶあんには北海道産小豆を使用。餡や寒天の仕上げには白州の名水を使っている。容器内に入っている黒蜜をかけて召し上がれ。

佐藤

芦屋樂膳〉の玄樂おはぎ詰め合わせ(佐1)です。

松任谷

これ、すごいね。華やか。

佐藤

芦屋のお店で、僕が行きつけの芦屋東山店は小さいお店で、土・日・月しかやってなくて、すぐに売り切れちゃう。

ご主人が黒米とか黒糖とか黒にこだわっているそうで、精製されていない、体に良い素材だけで作っています。
僕はスタンダードなつぶあんが好きなんですけど、変わったおはぎも楽しくて、これだけ揃うとかわいいし、ビジュアル的にもインパクトがあるから、手みやげにもぴったりだと思います。

松任谷

ピスタチオ、おいしい。

佐藤

変わりダネって外しそうだけど、どれもよくできてるんです。

松任谷

あんずのおはぎ、初めて食べたけど、僕の趣味とぴったり。いいですねぇ。気に入りました。

秋元

コンサバティブなのか、きな粉がすごくおいしく感じる。

———自家焙煎したきな粉だそうです。

酒井

確かに、きな粉もおいしい。あんずの甘さと酸っぱさもいい。

———では2巡目。秋元さんの番です。〈トミーズ〉のあん食(秋2)を。

秋元

これは神戸発。地元のタクシーの運転手さんに教えてもらったものですが、今はお取り寄せもできるようです。いろいろな種類があるのですが、このあん食が一番。

———バターご用意してます。

佐藤

バターでぐっとおいしくなる。

酒井

バター、合いますね。

秋元

あんことバター、合うんです。

松任谷

今回、僕、猛勉強して発見したのが、パンとバターとあんこという組み合わせです。皆さんはとっくにご存じだったかもしれないけど、僕はひたすら試して辿り着いた。
これって、どうしておいしいのかと思ったら、いわゆるモーニングの発想なんですよね。だから、コーヒーが最高にマッチする。

秋元

名古屋のモーニングの小倉トーストもそうですよね。

プロ仕様のどら焼き!?その良さがわかるのか

———続きまして、松任谷さん。

松任谷

これはね、プロ仕様のどら焼きです。シロウトにはこのおいしさはわかりにくいと思う。

酒井

それは……。

秋元

気をつけないと(笑)。

松任谷

金沢の〈豆半〉のどら焼き(松1)です。
事前にいろんなあんこを食べて、すーっと消えていくのが自分の好みだとわかったんだけど、このどら焼きは残るんですよ。
でも、よくよく食べ込むうちに、あんこの真髄は皮の渋味にあるなと思い至った。その渋味が残るところがやみつきになったんです。

秋元

なるほど。

松任谷

実は、第一印象はあまり良くなかったんです。でも、食べれば食べるほど味わい深い。だから、味がわかる人に贈りたい。

酒井

これ、コーヒーがすごく進みます。実は私、和菓子作りが趣味だったんですけど、どら焼きの皮って、上から垂らして、自然に丸くして焼くんです。
糖分が入っているから茶色く色がつく。こんなに薄い色だということは、糖分が少ないってことだと思うんです。それで、あんこの味を引き立てているんですね。

———どら焼きの皮には、昆布だしと醬油を加えているそうです。

酒井

キャラメリゼというのでしょうか、茶色く焦げ目がついた皮とは、また違ったおいしさがありますね。

佐藤

プロの発言だな(笑)。

———次なる推しあんこは酒井さん。

〈徳太樓〉きんつば
酒井さんの推しあんこ、〈徳太樓〉のきんつばをいただく。大きさも程よく、品が良いと全員絶賛。

酒井

徳太樓〉のきんつば(酒3)です。

松任谷

甘すぎず、上品。

秋元

ほんと、品が良い。

佐藤

程よい甘さ。

酒井

炭水化物の比率を極限まで少なくした、まさにあんこを楽しむためのお菓子ですよね、きんつばって。

秋元

あんこはやはり小豆の味ですね。豆の味をどのくらい残すかが、それぞれの味を決めるわけです。このきんつばは、今まで食べた中で一番、豆の味がします。

佐藤

あんこそのものという感じ。

酒井

私、きんつばを作るのが一番好きなんです。あんこを切って小麦粉の生地をつけて、一面を焼いたら次の面を焼いて……と、6面すべて焼いていくのが楽しい。

佐藤

和菓子を作ってたなんて、初めて聞いた(笑)。

秋元

いつ頃のこと?

酒井

高校生の時。

秋元

洋菓子の華やかさと対極にあるような気がするけど……。

酒井

そうなんです。辛いことがあった時に、効きます(笑)。

秋元

なかなか渋いですよね。

松任谷

このきんつばは凜としてますよ。昔、武士だった人が作っているみたいな。

作詞家・秋元康、音楽プロデューサー・松任谷正
あんこの合いの手に、松任谷さんから頼まれ、用意した箸休め、葉唐辛子の佃煮に舌鼓を打ちつつ。

———それでは、秋元さんリコメンドの〈清水屋〉の黒大奴(秋3)です。

秋元

それでは、プロ仕様のあんこ玉です(笑)。

酒井

プロならではの味わい。

秋元

有無を言わせない、豪速球の“あんこ”って感じがしませんか。

酒井

形も美しい。おいしいです。

秋元

どんとくるでしょう。

酒井

あんこを羊羹で包んであるというのがすごいですね。しかも、昆布が練り込まれているんですね。

秋元

よく行く天ぷら屋さんのデザートで出てくるものです。天ぷらのあとには、この強さがちょうどいいのです。これだけ単独だと強いですよね。あんこの原種のような感じがしませんか。

佐藤

チョコに近い感じがします。

松任谷

寝る前に食べたい。

酒井

ナイトキャップにいい。

佐藤

お酒に合いそうですね。

秋元

ブランデーとかウイスキーとか、合いますね。

作詞家・秋元康 音楽プロデューサー・松任谷正  エッセイスト・酒井順子 クリエイティブディレクター・佐藤可士和
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