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“手みやげ四天王”による、推しあんこ談義。秋元康、松任谷正隆、酒井順子、佐藤可士和〜後編〜

本誌の手みやげ特集やお取り寄せ特集でお馴染みの、秋元康さん、松任谷正隆さん、酒井順子さん、佐藤可士和さんの四天王が、長〜いモラトリアムを経て戻ってきてくれました。今回は、各自、マイベストあんこ手みやげを携え、「わがあんここそ天下一」と自慢しつつ、突っ込み合いつつ、あんこ談議に花を咲かせます。前編はこちら

初出:BRUTUS No.954「なにしろあんこ好きなもので。」(2022年1月11日発売)

Photo: Masanori Ikeda(YUKAI) / Text: Michiko P. Watanabe, Ai Sakamoto(data) / Styling: Chizu Nakayama / Cooking: Namie Omi

お子さま口にぴったり!?かわいいクリームあんみつ

———松任谷さんのオーダーに時間を要するため、順番を変更しまして、佐藤さんのあんみつ、いきます!

佐藤

あ、来た〜!〈シャトレーゼ〉の季節商品なんですけど、苺のクリームあんみつ(佐3)を。黒蜜をかけたら、ぜひ、思いっきりかき混ぜて食べてみてください。その混ざり具合がポイントなんで。

———追い蜜もご用意してますよ。

秋元

おいしい、おいしい。

松任谷

まずいわけがない。

酒井

イチゴ大福みたい。

松任谷

寒天も好きだなぁ。

秋元

酒井さん、また、男性陣はお子さま口だなと思ってるでしょう。

酒井

ごめんなさい。実は最初、ちょっと、そう思ってました。でも、食べてびっくり。おいしいです♡

秋元

イチゴのコンポートかな、イチゴソースみたいなのがおいしい。

松任谷

これ、今度買いたい。

佐藤

すごくバランスがいいと思うんです。この価格でこのクオリティ。子供がたくさん来た時とかに、知っていると重宝します。

———続いて酒井さん、いきましょう。京都〈光悦堂〉の御土居餅(酒2)です。

佐藤

お餅が軟らかい。

松任谷

まろやか。

秋元

あんこって、やっぱり塩分とのバランスですね。

酒井

私、塩味が効いた小ぶりなお菓子が好きなのかも。このこしあん、舌触りがとても滑らかでしょう。京都には、こういう餅菓子屋さんが多いですよね。近所に欲しいお店です。

———佐藤さんのラスト、〈パンタイム〉のあんバター(佐2)です。

酒井

和風マリトッツォみたい。

佐藤

芦屋のパン屋さんなんですけど、いつも行列していて。ピロシキとか海老カツサンドとかもおいしいんですけど、一番人気があんバター。
僕はそんなにスイーツが得意なわけではないんだけど、名物というので食べてみたら、すっごくおいしかったんです。

酒井

バターの量もたっぷり。あんこはさっぱり。

秋元

これは旨い!

松任谷

このパン、相当旨い。

秋元

パン自体がおいしいですよね。

———いよいよ、大トリ。究極のあんトーストセット(松3)です。

松任谷

大いに、追いあん、追いバターをしてください。あ、皆さん、バターが全然足りません。

佐藤

この炭水化物と糖分の量、ハンパないですね。

秋元

だから、おいしい(笑)。

松任谷

このメンバーは好きだろうと思った。

秋元

でも、これはやはりずるいですよね(笑)。編曲家・松任谷正隆のすべてが詰まってますよ。

佐藤

さすがの構成力。

酒井

あんバタートーストの時は、バターを塗るのではなく、のせるのが好き。均等の味にしないで、ムラを作りたいんです。

エッセイスト・酒井順子、クリエイティブディレクター・佐藤可士和
久しぶりの顔合わせに話も弾む。酒井さんの高校時代の楽しみ、和菓子作りに驚く佐藤さん。

世界の中心であんこを叫ぶ?2022年あんこの旅?

———では、そろそろ、みなさんに総論をお願いします。

秋元

あんこは、豆のおいしさに尽きると思います。かつて〈京味〉の西健一郎さんが、時々、丹波の小豆でほとんど砂糖を入れないぜんざいを作ってくれたんです。つまり、究極の豆のおいしさを味わわせてくれた。それを思い出しました。

あんこのおいしさは豆のおいしさに尽きるんだけれど、同時に、その豆のおいしさに、例えば、揚最中の皮の塩味とかバターの塩味、パンのサクサク感やフルーツとかを合わせる、といった、職人さんたちの努力で新しいおいしさが生まれている。

和菓子はあんこが中心です。いや、世界の中心はあんこなのです(笑)。
意外だったのは、可士和さんのかき混ぜたあんみつ。僕は〈おかめ〉でも〈梅むら〉でも、あんみつは混ぜない派。あの「混ぜる」というのは、新しい宇宙でしたね。

松任谷

和菓子は研究途上。まだまだ氷山の一角をさまよっているような状態です。もともとは、こしあん派だったんだけど、今回、あらゆるあんこと格闘して、少しつぶあん派に傾いています。

さっきも言ったけど、小豆の皮の渋味にはまっています。そこに極意があるような気がする。しばらく、あんこの旅に出てみようと思います。

酒井

子供の頃、母の作るあんこはつぶあんでしたが、ある時、〈銀座立田野〉で御膳汁粉を食べて、そのおいしさに衝撃を受けた。それ以来、こしあん派です。

私もあんこは、中心として常にあるもの。それに、炭水化物とか動物性脂肪とか果物とか、何をプラスするかによって、保守にも革新にもなりますよね。そして、久しぶりに和菓子作りの楽しさを思い出しました。また、作ってみようかな……。

佐藤

皆さんの表現を見せていただいて、面白かった。個性が出てましたよね。正隆さんのトーストに、プロデューサーの真骨頂を見ましたし、酒井さんとは付き合いが長いのに、和菓子少女のエピソード、初めて知りました。

4人

いやいや、楽しかったです。ありがとうございました。

作詞家・秋元康 音楽プロデューサー・松任谷正  エッセイスト・酒井順子 クリエイティブディレクター・佐藤可士和
まるで同窓生のような4人。あんこをめぐる冒険は続く⁉もっといろいろ試食してほしいな。

四天王の推しあんこ手みやげデータ

秋元's CHOICE

〈御菓子司 中里〉揚最中、〈トミーズ〉あん食、〈清水屋〉黒大奴
(秋1)〈御菓子司 中里〉の揚最中:北海道十勝産の小豆を練り上げたつぶあんを、上質なゴマ油でカラッと揚げた最中の皮でサンド。最後にふわりとまとわせる伊豆大島産の焼き塩が甘味の中に絶妙な塩味を生む。
(秋2)〈トミーズ〉のあん食:生クリーム入りのリッチな生地に、北海道産小豆を使ったつぶあんを混ぜ合わせて食パンに。そのままでも美味だが、トースターでこんがり焼いてバターをのせるのが秋元さん流。
(松3)〈清水屋〉の黒大奴:昆布を練り込んだツヤツヤの羊羹で、滑らかなこしあんをくるんだあん玉。餡には北海道産小豆を使用している。羊羹と餡、トッピングのケシの実の異なる食感も楽しい。

松任谷's CHOICE

〈豆半〉どら焼き、〈松島屋〉の豆大福、究極のあんトーストセット
(松1)〈豆半〉のどら焼き:しっとり軟らかな生地には、味が濃厚な卵「美珠卵」の黄身とバター、醬油、昆布だしを使用。小豆の風味豊かなあんこと味わえば、甘味と旨味の絶妙なバランスを感じられる。
(松2)〈松島屋〉の豆大福:東京三大豆大福の一つ。北海道石狩産の小豆に、富良野産の赤エンドウ豆、宮城県産もち米・みやこがねと素材にもこだわる。赤エンドウ豆の塩味が、甘さ控えめな餡と合う。
(松3)究極のあんトーストセット:〈フォション〉のパン・ド・ミに、〈エシレ バター〉の有塩と、〈トラヤあんスタンド〉のあんペースト2種を組み合わせた松任谷さんのオリジナル。「セットにして贈りたい」

酒井's CHOICE

〈たいやき わかば〉たいやき、〈光悦堂〉御土居餅、〈徳太樓〉きんつば
(酒1)〈たいやき わかば〉のたいやき:一尾ずつ丁寧に焼き上げられる天然もの(一丁焼き)。パリパリした薄皮の下には、北海道産小豆を使い塩気を効かせたあんこが頭からしっぽまでぎっしり詰まっている。
(酒2)〈光悦堂〉の御土居餅:豊臣秀吉が築いた土塁「御土居」を模して店主の橋本秀正さんが考案。豆大福にふんわりときな粉をかけている。滋賀県産のもち米を使った羽二重餅が軟らかく、食べ飽きない。
(酒3)〈徳太樓〉のきんつば:北海道産小豆を使った自家製餡が味の決め手。丁寧に煮て灰汁を抜き、よく晒すことでくどくない甘味に仕上げている。「酒の肴にする方もいるほど」と女将の増田真理さん。

佐藤's CHOICE

〈芦屋樂膳〉玄樂おはぎ、〈パンタイム〉あんバター、〈シャトレーゼ〉苺のクリームあんみつ
(佐1)〈芦屋樂膳〉の「玄樂おはぎ」6個入れ:黒米のプチプチとした食感が魅力のおはぎ。常時10種類ほどが揃う。写真右上から時計回りに、栗モンブラン、あんず、ピスタチオ、粒あん、丹波黒(きな粉)、抹茶。
(佐2)〈パンタイム〉のあんバター:小さい丸形のフランスパンに、北海道産小豆とテンサイ糖で作ったつぶあん、そして国産無塩バターを挟んだ、元祖あんバターサンド。最後に振りかけるひと塩が味の決め手!
(佐3)〈シャトレーゼ〉の苺のクリームあんみつ:紅ほっぺをフィーチャーしたクリームあんみつ。つぶあんには北海道産小豆を使用。餡や寒天の仕上げには白州の名水を使っている。容器内に入っている黒蜜をかけて召し上がれ。