Listen

Listen

聴く

90年代J-POPには人を集める魅力がある。山崎亮×芳賀陽平×奥冨直人

この日、バー〈霧の中の風景〉に集まったのは、テレビとともに育った同世代の3人。彼らの90年代J-POP談議から、酒場を彩るのに必要な音楽が見えてくる。

photo: Satoshi Nagare, Jun Nakagawa / text: Asuka Ochi, Ryota Mukai

90s J-POPには
人を集める魅力がある

山崎亮

ここでレコードバーをやってて、90年代のJ-POPを流してる時が自分のテンション的には一番いい。ペタ(芳賀陽平)は最近、『大豆田とわ子と三人の元夫』のエンディングを監督してるし、TOMMY君(奥冨直人)はDJをやる時は結構J-POPをかけてるよね。3人とも幼少期のドラマを原体験とした音楽でつながってる。

90年代、俺らが小学生の頃のドラマって、贔屓目なしに面白かったでしょ。当時、音楽をインプットする情報って限られてたけど、テレビは間違いなかったよね。

奥冨直人

そうだね。ドラマ主題歌が自分にとっては音楽の原体験だった。

山崎

初めて主題歌がいいと思ったのは小3で『ラブジェネレーション』。大滝詠一の「幸せな結末」かな。

奥冨

わかるわー。

芳賀陽平

俺は『金田一少年の事件簿』かなぁ。KinKi Kidsの主題歌で。

山崎

「Kissからはじまるミステリー」ね。それと一緒に『若葉のころ』のエンディングの「FRIENDS」も入ってる『A album』を、メジャーデビュー曲の「硝子の少年」と同時リリースしてて、デビュー前からバッチリ下地を作ってたのもKinKiのすごさ。だってデビュー曲から、作詞・松本隆、作曲・山下達郎なわけ。その時点で、もう間違いないよね。

芳賀

『ぼくらの勇気 未満都市』の「愛されるより 愛したい」もそうだし、90年代のKinKiはどれもいい。その後、少し空いて「フラワー」とか、2000年に被るけど『Summer Snow』の「夏の王様」でしょ。

奥冨

「青の時代」も好きだったな。

芳賀

マジで最高だよな。

山崎

当時はどう考えたってテレビがメインコンテンツだった。今は能動的に聴きたいものを選ぶ時代だけど、完全に受け身だったというか。

奥冨

だって、1日8時間くらいテレビ観てたもんね。小6で寝るのが深夜2時だったから。『ランク王国』でグラビア写真集のランキングまで観てから、ようやく寝るの。

山崎

マジで〜(笑)。

奥冨

深夜の音楽番組が、夜更かしするきっかけになってた。

芳賀

『THE夜もヒッパレ』とかね。

山崎

完全にカラオケだよね(笑)。

奥冨

尾藤イサオとか、『ヒッパレ』でしか観たことないし(笑)。

山崎

狩人もだよね。しかも、Kinkiとか歌っててさ。高橋真梨子が宇多田ヒカルを歌う、みたいな状況。今考えると異様だよ(笑)。

芳賀

安室奈美恵が「明日、春が来たら」を歌ってて、スゲーと思った。

山崎

豪華だよなぁ。

東京〈霧の中の風景〉外観

奥冨

90年代のJ-POPって楽曲として20〜30年経っても支持され続けてて、耐久度がすごすぎる。DJでかけると最初はみんな気がつかないんだけど、歌が始まると超盛り上がるのが快楽。25年前の作品のイントロが実はめちゃくちゃやばいっしょ!って、今も言えるのがすごいんだよね。しかも4曲に1回DJでかけたら、“J-POPをかける人”って認識になるくらい、パンチが強い。

芳賀

小森田実の作曲もヤバい。Folderの「パラシューター」とか、超ハウスだよね。今聴いてもアガる。

山崎

小森田実はSMAPの「ダイナマイト」や「Shake」もだね。あれも完全にハウスだし。ダンスミュージックを意識せずとも、このへんの曲で原体験として聴いてたよね。

奥冨

小室哲哉も90年代にバブルが終わってから、世間にクラブミュージックを知らしめた存在だよね。ポップチャートに毎週レベルでいろんなボーカリストの楽曲を落としてたのって、今のスピード感とも似てる気がする。もちろん今だってすごくいい音楽はどんどん出てきてるんだろうけど、更新があまりにも速すぎて噛み砕く時間がないというか。歌詞カードがボロボロになるくらい読むテンションがなかなかないよね。

山崎

新しい音楽ジャンルの歌い手が出てきてからの小室のスピード感はすごかったね。それだけエネルギーも半端なかったんだと思う。

芳賀

歌謡曲マナーがあるのもいいところだよね。今ならEDMをそのままやっても受け入れられる素地があるけど、90年代はそれに歌謡曲をのせないと理解されなかった。だからキャッチーだけど、ビートはきちんと強いし、歌いやすい曲も多いんだよね。

山崎

成長して歌詞の意味を理解できるようになると、またさらにJ-POPに感じる魅力が更新された。歌詞が凝ってるから店でかけるといきなりみんなスイッチが入って、会話も盛り上がる。

芳賀

今や、悩み相談してくる人に岡村靖幸の「ロングシュート」の歌詞を引用しちゃうもん。「悲しくてつらいことばかりならばあきらめてかまわない」とか、その通りすぎるだろ、って。

奥冨

J-POPには情けない男の姿も漏れ出てるよね。最終的に人の心を掴むのは、音楽に大事な要素だと思う

芳賀

20歳の頃、DJの二見裕志さんがクラブで明け方に山下達郎の「SPARKLE」をかけたんだよね。ハウスの流れでJ-POPを使う人なんていなかったから超アガって。TOMMYが女子十二楽坊をかけた時、それと似た驚きがあった。なんだっけこれ⁉やべーって。女子十二楽坊、クラブでかけるやついないって(笑)。

山崎

なんだっけこれ、って超大事。しばらくして、わかったー!って来る感じがJ-POPの良さなんだよな。

奥冨

最高の瞬間だよね!

東京〈霧の中の風景〉店内
珍しくガッツリと音楽の話を。90年代の名曲が流れるたびに、曲に話題が持っていかれる楽しい夜。右から/山崎亮、芳賀陽平、奥冨直人

〈霧の中の風景〉が選ぶ、
飲みながら聴きたい
90s J-POPプレイリスト

世代を超えて支持される、
ピークタイムを彩る8曲

「CANDY GIRL」hitomi
「愛の言霊〜Spiritual Message〜」サザンオールスターズ
「真夏の夜の夢」松任谷由実
「Body&Soul」SPEED
「硝子の少年」KinKi Kids
「Movin' on without you」宇多田ヒカル
「パラシューター」Folder
「渋谷で5時」鈴木雅之&菊池桃子

多幸感に溢れた朝を
迎えさせてくれる8曲

「WOW WAR TONIGHT」H Jungle with t
「Love Somebody」織田裕二 with Maxi Priest
「朝がまた来る」DREAMS COME TRUE
「ラストチャンス」Something ELse
「つつみ込むように…」MISIA
「Don't wanna cry」安室奈美恵
「朝日を見に行こうよ」SMAP
「幸せな結末」大滝詠一

まだ宵の口。
店の雰囲気を作っていく8曲

「君が思い出になる前に」スピッツ
「Driveに連れてって」今井美樹
「Wing」知念里奈
「love the island」鈴木あみ
「Forever」反町隆史
「Feelin' Good〜It's PARADISE〜」Da Pump
「Memory 青春の光」モーニング娘。
「DA・YO・NE」EAST END×YURI

夜更け時、エモーショナルな
気分を演出する8曲

「Hello,Again−昔からある場所−」My Little Lover
「There will be love there−愛のある場所−」the brilliant green
「Blow Ya Mind−I Love AMERICA」KOJI 1200
「SOULS」bird
「砂の果実」中谷美紀 with 坂本龍一
「強く儚い者たち」Cocco
「星のかけらを探しに行こうAgain」福耳
「純愛ラプソディ」竹内まりや