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陶芸家・鹿児島睦の「私の食堂、私の一皿」。〈博多 鈴懸本店〉のナポリタン

洋食には「おいしい」や「好き」だけではない思い出や物語があります。あの人は、どんなメニューが好きなんだろう。洋食を愛する陶芸家・鹿児島睦さんにお気に入りの食堂と一皿を綴ってもらいました。特別な一皿をどうぞ。

photo: Yuki Katsumura / text: Masae Wako

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福岡・博多〈博多 鈴懸本店〉のナポリタン

談話・鹿児島睦

福岡の和菓子屋〈鈴懸(すずかけ)〉さんの本店だけでいただけるナポリタンは、昔からある昭和なタイプとは少し違います。麺は細め。ケチャップ味ではなく、おいしいトマトをギュッと煮詰めたような、品のいい濃厚さです。

てっぺんには温泉卵。でも最初はがまん。麺が半分になったところで黄身をくずし、卵まみれにして食べるのがたまりません。ワクワクがとめどなく溢れてきます。私はバリバリの洋食憧れ世代なので喫茶店風スパゲッティも好きですが、ナポリタンだけは他所で頼めない。おいしさの密度が違うのです。昔ながらの味が好きな方も、虜(とりこ)になると思います。

1つ100円ほどで買えるおやつを、ご進物にできるクオリティで作る。そういう〈鈴懸〉さんの矜持を、ナポリタンにも感じます。日常が特別。いつもの味が尊い。福岡の自慢です。(談)

福岡〈博多 鈴懸本店〉のナポリタン
アツアツの鉄板で登場。トマトみの濃いソースにキノコやベーコンがたっぷり。1,100円。

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