使うほどに“旅の思い出”が蘇る。そんな手仕事を作家とともに紡ぐ
鉄骨剥き出しの天井に、味のある古道具を用いた什器(じゅうき)。かつて表具屋を営んでいた祖父の仕事場をリノベした店内には、器から暮らしの道具、アパレルまで幅広く揃う。その様子を眺めながら、「自分の好きなものだけを置いています」と笑うのは店主の高野豊寛さん。
「日常を豊かにする“旅の思い出”を持ち帰ってほしい」と、2008年に妻のかおりさんとともに、ここ〈SPICA(スピカ)〉をオープンした。
15年の間に扱う作家は50名近くになり、店もギャラリーを併設して拡張。亀田大介・亀田文、松原竜馬、角田淳ら大分を拠点とする作家を中心に他エリアもカバーする。「方向性を同じくする作家さんと一緒に歩んでいきたい」と高野さん。物静かだけれど芯に一本通った店主が選ぶ手仕事は、どれも美しく、使い込むほど魅力が増してくる。
「高知の長野大輔さんの作品も面白いですよ。特に錆釉の器は焼き加減などによって大きく表情が変わる。独特の質感ながら、ご飯をおいしくする器です」。2022年には、音楽をテーマにした姉妹店〈puno(プノ)〉をオープン。高野さんの“旅の思い出”探しは続く。