書き手から売り手へ可能性を広げ、作家と器を伝えるサロン的存在
店主の高根恭子さんが店を構えた経緯はとてもユニークだ。「もともと器が好き、文章を書くことも好きだったことが高じて、作家さんに取材をさせてもらってnoteで発信したり、新聞に発表の場をもらうようになったんです。そこで聞いた話を自分だけが楽しむのはもったいないと、共有したくて店を開くことに」という。
店内に並ぶのは、砂田政美や畑中篤ら、誰かに伝えたいと心を動かされた作家の器。それらは作家の人となりを伝える高根さんの言葉も添えて、使い手の元へと旅立っていく。
「だから、うちに来てくださる方は、誰々さんの器がよかったと、ちゃんと作り手を覚えてくれるのが嬉しい」と高根さん。100年前に建築事務所として建てられた建物をそのまま生かした空間に並ぶのは、土ものを中心とした器たち。
「おばあちゃんになるまで長く使える渋いものが好み。山形で作陶する鈴木美雲さんは、李朝に魅せられて陶芸と向き合う方。山から土を取ってきて、自作の蹴轆轤(けろくろ)で形を作っています。若手なのに巨匠のような器を作るなと惹かれました」。石が混じる土の表情や、歪みもまた愛おしいという。