触れたくなる確かな造形と原始的な土味を持つ若手の器を
「“土味(つちあじ)”と呼ばれる素材本来の風合いを生かしながら、新鮮な発想でゼロからものを生み出せる若手が増えている気がします」。札幌市にある焼き物と手仕事の店〈Licht(リヒト)〉の遊座(ゆざ)あきこさんは言う。20代で器の作り手を志して茶陶や古道具の世界に関わった後、生活工芸のギャラリーでも働いた。さまざまな視点で器と向き合うことのできる頼れる存在だ。
2019年に始めた店には、これまでに関わりのあった土地の作家が並ぶ。栃木県の益子(ましこ)で活動する能登千加重(のと・ちかえ)の陶胎漆器(とうたいしっき)や伊藤叔潔(よしゆき)の白磁。岐阜県多治見市の呉瑛姫(ごえいひ)や北海道伊達市の加地学。「毎日使っても飽きず、手に取りたくなるシンプルな器」が多いが、どれもが実用のアートとでもいうべき美しさを備えていて、目も手も引きつけられる。
「注目しているのは岐阜県土岐市の石川裕信さんが作る、抽象画のように美しい炭化焼き締め。焼成前の土をスプーンの裏でひたすら磨くことで、つるつるっとした質感を出しています」。店名のリヒトはドイツ語で光。作り手の活動を丁寧に解釈し、敬意を持って光を当て続ける。