信頼できる目利きがいる器の店。世田谷〈工芸喜頓〉

旅の目的地になる、魅力的な器の店が増えている。BRUTUSが注目したのは信頼のおける目利きが営み、店頭に立つ現代器作家のギャラリー&ショップ。彼らは、今どんな80〜90年代生まれの新世代作家に注目しているのか?器のこと、作家のことを聞いてみよう。

photo: Tomo Ishiwatari / text: Hikari Torisawa / edit: Ai Sakamoto

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土、木、布などのマテリアルを愛する店主が選ぶ、民藝の器

民藝を軸に、国内の陶器、ガラス、木工、織物に、フランスの工房の器などを揃える〈工芸喜頓(こうげいきいとん)〉。オンラインショップ「日々の暮らし」も同様に、取り扱うのは60代から90代の作家が多く、若手作家はごくわずかだという。

年齢うんぬんというより、「何を表現するかという企みも時代のトレンドも超越する、魅力とパワーを持った作家さんの器だけを扱いたくて」と、石原文子さん。セレクトの基準は、石原さんにとっての民藝の定義にも直結する、「日常使いができ、眺めて楽しく、身近に置くことで幸せを感じることができるもの」。

土地ごとに伝わる造形や、土の特性を感じられる器に出会ったら、まずは自ら購(あがな)い、食卓で使い、納得したうえで作家に連絡を取り、常設に加えていくという。

2019年に島根県松江市に西持田窯を築窯した津田堅司の器との出会いは、沖縄での修業時代まで遡る。「深い緑に藍が混じったような呉須釉、茶と緑が合わさるような飴釉など、食材に馴染む自然な色合いに惹かれます。どっしりとした高台から縁までの立ち上がりも、櫛描きも美しいんです」。

東京〈工芸喜頓〉オーナー・石原文子
世田谷通り沿い、ガラス窓から店内が見える。古材を使った棚や小上がりに表情豊かな器が並ぶ。

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