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阿佐ヶ谷〈ネオ書房〉映画評論家が受け継いだ、子供も遊べる古本屋

もともと異業種で働いていたものの好きが高じて店を開いたり、心から本を愛してやまない書店員がジャンルに特化した選書で勝負する店を始めたり。ここ数年、個性溢れる町の本屋が増えてきた。なかなか見つけられない貴重な古書からリトルプレス、そして店主が偏愛してやまない良書まで。新たな世界の扉を開いてくれる本に出会う冒険へ出てみよう。

Photo: Keisuke Fukamizu / Text: Keisuke Kagiwada

ネオ書房(阿佐ヶ谷/東京)

『宮崎駿の〈世界〉』『怪獣少年の〈復讐〉 ‌70年代怪獣ブームの光と影』などの著作で知られる評論家の切通理作さんが、阿佐ヶ谷に古書店をオープンしたという。その名は〈ネオ書房〉。

ところが、行ってみると、目の前に現れたのは、もう何年もこの場所にありそうな昭和レトロを地でいく建物で、まったく“ネオ”ではない。実はこの場所には、1954年から続く〈ネオ書房〉という貸本屋(その後、古書店)があったという。

しかし、それが閉店するというので、「こんな空間で自分のお店がやれたら」とかねて妄想してきた切通さんが受け継ぎ、オープンしたのが新生〈ネオ書房〉というわけだ。

棚には、前〈ネオ書房〉から受け継いだ稀少書を含む蔵書の一部と、映画、特撮、漫画など、切通さんらしいジャンルの本が並ぶ。「自分の著作が常にすべて並んでいる本屋も憧れだった」とのことで、レジ横の棚には自著が威風堂々と面陳されている。

今後は、切通さんと親交のあるグラフィックデザイナーの高橋ヨシキさんや映画評論家のモルモット吉田(吉田伊知郎)さんといった方々がセレクトした本も並ぶ予定だそう。

「僕自身が幼少期に通い詰めた貸本屋のように、子供たちが集まるお店にしたいんです」と切通さん。そのため、店内には昔懐かしい駄菓子が置かれている。そんな切通さんの直近の夢は、駄菓子屋の店先でよく見かける「10円ゲーム」の機械を置くことだそう。

東京 ネオ書房 店内
特撮本の棚にはソフビ人形まで。中には切通さんの私物もある。