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本好きを京都に誘う、築96年の書庫へ。〈つるかめ書房〉

もともと異業種で働いていたものの好きが高じて店を開いたり、心から本を愛してやまない書店員がジャンルに特化した選書で勝負する店を始めたり。ここ数年、個性溢れる町の本屋が増えてきた。なかなか見つけられない貴重な古書からリトルプレス、そして店主が偏愛してやまない良書まで。新たな世界の扉を開いてくれる本に出会う冒険へ出てみよう。

Photo: Keisuke Fukamizu / Text: Hikari Torisawa

つるかめ書房(東寺/京都)

大正12(1923)年に建てられた京町家をリノベーションしたら、鶴と亀の置物が見つかった。かつて炭屋と質屋が営まれていたその建物は〈間−MA−〉と名づけられ、母屋はカフェとレストランに、離れの建物は〈つるかめ書房〉へと生まれ変わった。

京都 つるかめ書房 入口
離れの入口で鶴と亀が出迎える。

母屋から庭に面した廊下を渡って敷地の奥に立つ離れへ向かう。鶴と亀の置物と均一本の棚に出迎えられて足を踏み入れれば、正面の平台には雑誌がずらり(80年代のブルータスも発見!)。

片岡義男の単行本&文庫本が勢揃いする棚もあれば、伊丹十三を特集した雑誌も選集とともに並ぶ。金子國義の装画に目を奪われる富士見ロマン文庫、ホルヘ・ルイス・ボルヘスが編む世界文学アンソロジー「バベルの図書館」シリーズが面を見せ、新潮クレスト・ブックス、講談社文芸文庫などを集めたコーナーもそこここに。井伏鱒二の弟子であった小沼丹の横に、内向の世代の作家の一人、後藤明生が続き、壁際の一角には古井由吉が鎮座する。

純文学からライトなエッセイまで、文芸、SF、ミステリー、暮らしにまつわる本に絵本に、ヴィンテージの紙モノに、ラインナップはとにかく多彩だ。

大阪・箕面〈ひなたブック〉の2号店でもあるこのスペースを営む小林誠二さんは、「置いている本は5000冊くらいかな、8割方は僕も読んでいます。珍しい本よりも、自分が読んでいた本、好きな本を中心に揃えました」と言うのだが、実はマニア垂涎のアイテムも少なくない。

2階では現在SF&ミステリーフェアを展開中で、例えばフィリップ・K・ディックならば、80年代のサンリオSF文庫、80〜90年代の創元SF文庫&創元推理文庫、最新のハヤカワ文庫SFまでが揃い踏み。春陽文庫の江戸川乱歩、秋元文庫のジュヴナイルSFなど、絶版本も良心価格で並んでいるため、古本屋がこっそり、ごっそり買い物をしていくことも多いのだとか。

2019年3月の開店から半年余りが経ち、じわじわとファンを増やし続けている〈つるかめ書房〉。
古くて新しい名所として、本好き、本屋好きが京都を目指すべき素敵な理由になるはずだ。