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色彩のごとく味を混ぜる、カクテル×アート体験。世田谷代田〈Quarter Room〉

次の東京のバーシーンを担うのはどんな店だろう。まず浮き彫りになったのは一人のキーマン。東京23区の東と西でまったく異なる新たな店を営む野村空人さんだ。この記事では、彼が東京の西で新たなカクテルの表現に挑む〈Quarter Room〉について紹介する。

photo: Kenya Abe / text: Chisa Nishinoiri

POINT

1.アート作品をカクテルに解釈して提案。
2.キュレーターを招き定期的に特別展を開催。
3.他のバーテンダーとコラボイベントも実施。

色彩とアートから、カクテルを新解釈

バーテンダーの野村空人さんは、バー業界の風雲児。アートを学びに渡ったロンドンでバー文化に魅せられ、7年間バーテンダーの経験を積み、帰国後は東京・富ヶ谷〈フグレン・トウキョウ〉に在籍。

独立後は店を持たずにゲストやイベントでカクテルを出しながら、ドリンク開発や店舗プロデュースなどを手がけてきた。「カクテルはもはや、おいしいだけのフェーズではいられない」と語る野村さんが新たに仕掛けたのは、「アート×カクテル」の体験。

世田谷代田に今年オープンした〈クォーター・ルーム〉は、カクテルを通して五感でアートを体験するような特別な空間だ。

〈Quarter Room〉の店内
店の真ん中に堂々と設えらえたバーをコの字のアイランドカウンターがぐるりと囲む。この日は昭和の日にちなんだカクテルイベントを開催。近代のカクテル文化にも大いに影響を与えた昭和のカクテルが新解釈で登場。スタンディング客で深夜まで賑わいを見せた。

「カクテルは見た目はもちろん、味や香りなどの絡み合う要素を立体的に構成しなければいけない。それって空間演出だな、と。そこで、自分というフィルターを通してレシピを解釈し、空間としてのカクテル体験を提案したいと思い至ったんです」

メニュー表には、1800年代から現代に至る国内外のアート作品の名前が並ぶ。日本画家、渡辺省亭の「牡丹に蝶の図」。ポール・セザンヌの「りんごとオレンジ」。現代アーティスト、キース・ヘリングの「ラッキーストライク」。

作品はそれぞれ、クラシックカクテルが登場した同時代と紐づけられ、アート作品からインスパイアされた新解釈のオリジナルカクテルに落とし込まれている。

一見奇を衒っているようで、クラシックカクテルに対する野村さんの深い敬愛も滲む。バーでアートとカクテルを楽しむというスタイルに行き着いたのには、ロンドンでアートを学んだ経験も影響しているのだろうか。

「海外でのバー経験やアーティストとのコラボカクテルの開発、バーのディレクションなど。ここに至るまでのさまざまな経験を経て、カクテルとアートの親和性を強く感じるようになりました。と同時に、自分の中で、色を混ぜるように味を混ぜるという表現に落ち着いたんです」

彼のカクテル作りにおいて、色は一つの鍵でもある。定番で展開する前述の新解釈のクラシックカクテルに加え、月替わりの「カラーカクテル」もメニューイン。5月は緑色、6月は水色と、色をテーマにアート作品をピックアップし、カラーチャートと照らし合わせて色彩感覚から味や香りを組み立てたカクテルを表現。

さらにキュレーターの細野晃太朗さんを迎え、年に6回の予定で現代アーティストの企画展も開催し、展示作品をカクテルに見立てた特別メニューも併せて展開する。「今は酒造免許を取得中。ラボとしての機能を高めてボトルドカクテルなども製造し、店の入口で販売できるキオスクもオープン予定です」。〈クォーター・ルーム〉の進化は続く。