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ドーナツ×クラフトビール?池ノ上〈yup!〉でペアリングの妙を楽しむ

池ノ上に夫婦で営む〈yup!〉。素朴なクラフト系スペシャリティコーヒーやタップのクラフトビールと一緒に提供する、ハッピー&ホットなドーナツの店。

photo: Kiichi Fukuda / text: Kei Sasaki

二人三脚で手作り、揚げたて
アツアツの夫婦ドーナツ

バリスタの小松一樹さんと妻の百絵さん夫妻が営む小さな店は、京王井の頭線池ノ上駅からすぐ、下北沢や代々木上原も徒歩圏内に位置している。立地から広さまで一発で惚れ込んだという元ガレージの物件。コンクリート打ち放しの内装がスタイリッシュだ。

L字カウンターに人が集うスタンドで、看板商品はクラフトビールとスペシャルティコーヒー、そして自家製のドーナツ!ユニークな店は、ドーナツ担当の百絵さんの並々ならぬ愛から生まれた。
「食べるのも作るのも大好き。愛らしい見た目も、軟らかさも。今でも仕込みをしたり、揚がっている様子を見たりして“愛おしいなあ”っていつも思っています」

東京〈ヤップ〉ドーナツ、ブレンドコーヒー
ドーナツ1個260円~。ブレンドコーヒー500円~。クラフトビール5~6種パイント1,300円~。

開業は、2021年の11月。一樹さんから独立したいという話を聞いた百絵さん、「コーヒーの隣に、ドーナツがあったら最高じゃない」と、一念発起した。コーヒー、ドーナツに夫妻が偏愛するクラフトビールをプラス。〈yup!〉は、2人が「近所にあったら」と願っていた店の形になった。

もともと趣味でよく作っていたというドーナツ。百絵さんは味をさらにブラッシュアップするため、都内の人気ドーナツ店で働き、揚げ方や素材選びなどを学んだという。ドーナツは、定番のシュガーとシナモンシュガーの2種に加え、日替わりが2種。粉の配合と発酵時間を試行錯誤し、もちっと、かつ軽やかな生地に仕上げた。日替わりはマンゴー、ラズベリー、レモンなどのフルーツ系から、チャイのような変わり種グレーズドまで幅広いラインナップ。

「ビールとは合わないと思われがちですが、スパイス香る本格的なチャイや甘酸っぱいラズベリーのグレーズは、同じようなフレーバーを持つクラフトビールも多く、お互いの味がより引き立つ組み合わせなんです」と、百絵さん。

クラフトビールは4種類から選ぶことができ、静岡のWest Coast Brewingなどの話題のブリュワリーの銘柄が揃う。ただしペアリングなんて難しい話は不要。好きに楽しんでくれたら、というスタンス。
コーヒーは世田谷にあるネパールのスペシャルティコーヒー専門店〈YETI ROASTERY. COFFEE〉から直接豆を仕入れている。

「まだ日本ではあまり普及していない豆なんですが、上質で豊かなフレーバーに感動して。知られざる産地の魅力を伝えていけたら」と一樹さん。実は同店のオーナー、アミット・チェトリさんとは、ビールの店で出会った。自分たちの店も「思わぬ人やものと出会える店にしたい」とアーティストの作品の展示販売や、週末には古着屋やプランツショップなどとコラボしたイベントも積極的に行っている。

かと思えば、一人でおやつのドーナツを買いに来る子供から、散歩途中に立ち寄るご年配まで、ゲストの層は幅広い。わずか7坪の店だが可能性は無限。さまざまな人々の輪を作りながら、次なるおいしい、楽しい企みの種を膨らませている。