ディスクユニオン JazzTOKYO
「10年ほど前から、過去の和モノやジャズのレコードを掘りに来る海外のお客さんが増えたため、東京のレコードショップの多くは、中古と新作を並べて販売するケースが増えてきました。現在ではタワーレコードなどの大型店も中古レコードコーナーを設置しています。
一つの店で両方の品がチェックできるわけですから、便利になったと思います。僕が知る限り、90年代から中古と新譜を並行して販売していたのが〈ディスクユニオン〉。中古レコード市場が大きくない欧米のDJやミュージシャンを〈ディスクユニオン JazzTOKYO〉に連れていくと、その品数に驚くほど。チェックしていなかった新譜や再発盤まで、とにかく品揃えが充実しています」
JET SET 下北沢店
バイヤーによる新作のセレクト、独自企画盤の制作などで、ファンから絶大な信用を得ている〈JET SET 下北沢店〉も、東京のレコードシーンには欠かせない存在だ。
「最近は“新譜を買うなら、まずはJET SETへ”という人が増えています。その理由は、お店の企業努力だと思いますが、とにかく新作の価格が安い。UKシーンを牽引するエズラ・コレクティヴやヌバイア・ガルシアの新作も、他店と比べて数百円安かったように思います。オンライン予約もできますよ。
最近では入荷日には、みんなが買いに行くので、人気作は売り切れになるものもあります。最新アルバムだと、現在1枚5,000円くらいするので、大量にレコードを買うDJやコレクターにとって、本当にありがたいですね」
JAZZY SPORT MUSIC SHOP TOKYO
〈JAZZY SPORT MUSIC SHOP TOKYO〉は自社レーベルのほか、アパレルブランド、下北沢店にはダンススタジオなど、さまざまな展開を見せている。
「ヒップホップの元ネタであるジャズやファンクの中古から、ジャイルス・ピーターソン主催〈Brownswood〉作品、ロス・マクヘンリー『Nothing Remains Unchanged』、それに黒田卓也の編集盤を発表して話題の〈First Word Records〉の作品など、UKのフューチャージャズの新作まで品揃えがとにかく幅広い。
また〈JAZZY SPORT〉は、流通の都合で日本未入荷のレコードをレーベルと直接やりとりして仕入れるなど、本当にいい作品を広げようとする強い意志を感じます」
RANA-MUSICA RECORD STORE
世界的に注目を浴びている下北沢に、2021年にオープンした〈RANA-MUSICA RECORD STORE〉は個人店ならではのこだわり溢れるラインナップだ。
「新旧のダンスミュージックが中心ですが、アフリカなどのワールドミュージックをはじめ、ジャズもニッチなものが多く、他店とかぶらないセレクションが素晴らしい。オーナーのRyo NakaharaさんはDJとしても活動していて、チェックしているミュージシャンやプロデューサーが僕と似ていて、知っているものも多い。それでも行くたびに発見があるんです。
UKの〈Backatcha Records〉から再発されたソニア『Easier To Love』、日本人プロデューサーCalmさんの新作など、Ryoさんがリコメンドしていることで知りました」
また、レコード店では、スタッフとのコミュニケーションから、思わぬ発見もあるという。
「お店に通い続けると、自分の好みを知ってくれている店員さんから“これもいいですよ!”とか、リコメンドしてもらえることが増える。アルゴリズムからはじき出したサブスクの“あなたにオススメ”以上にハズレがない。ジャズは歴史もあるので、その背景も熟知し、新作の情報も日々チェックしているバイヤーさんが店にはいる。その人と話をすることで、新しい音楽と出会えるわけですから、ジャズは店に行くことでより深めていけるジャンルだと思います」