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イタリアのクリーム入り揚げドーナツ、ボンボローニを知っている?東京の3軒

イタリアのクリーム入り揚げドーナツ・ボンボローニ。北から南まで全土で親しまれている国民的ドルチェが、満を持して日本でブレイク中だ。背景には、イタリア菓子やパンの専門店の登場がある。成り立ちから製法、それぞれの店の味について紹介しよう。

photo: Atsushi Kondo / text: Kei Sasaki

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新富町〈Litus〉(イタリア菓子専門店)

イタリアの味を伝える全4種!
注文後に仕上げる菓子専門店の味

〈Litus〉4種類のボンボローニ
ボンボローニ大(φ8㎝)1個530円(φ5㎝のミニ300円)。手前から時計回りに、カスタードクリーム、リコッタチーズ、ピスタチオクリーム(プラス70円)、アプリコットジャムの4種。

店主はイタリアで7年、菓子一筋に腕を磨いた塩月紗織さん。星付きレストランでドルチェ部門のシェフとして働いた経験もあるが「日常に根ざす味を」と、イタリアの郷土菓子専門店を構えた。クリーム入り揚げドーナツは、修業時代を長く過ごした北イタリアでは「クラッフェン」と呼ばれていたもの。当初はその名で提供していたが「同じもの?」という問い合わせが増え、今の人気が定着するように、と「ボンボローニ」に改称した。

全4種ものラインナップからも思い入れが伝わってくる。リコッタチーズとピスタチオクリームは塩月さんのオリジナルで、過ごした期間は短いものの思い入れの強いシチリアの味を取り入れた形。注文後にフィリングを詰めてくれるのもありがたい。ほかにも、やはり注文後に仕上げるカンノーリなど、名物多数。店先でかぶりつけるようテイクアウトのエスプレッソも用意し、東京の東側からイタリアの味を伝えている。

永福町〈PANIFICIO VIVIANI〉(イタリアパン専門店)

料理人とパン職人の協働で作る
ベーシックを突き詰めた味

永福町〈PANIFICIO VIVIANI〉(イタリアパン専門店)のドーナツ
手前がボンボローニ クレマ、奥がチョコラート。各440円。クレマはカスタードにレモンの香りをつけている。

ことレストランでは日本で市民権を獲得しているイタリアの味だが、パンや菓子はいつまでもフランスの流れを汲むものが優勢。知られざるイタリアの「粉もの」のおいしさ、楽しさを伝えたいと、神泉の繁盛イタリアン〈オルランド〉の小串貴昌さんが開いたイタリアのパンと焼き菓子の店だ。

製造は三宿〈シニフィアン シニフィエ〉で活躍した職人、布施優希さんが担う。イタリア伝統の味、食べて唸った思い出の味を小串さんが伝え、布施さんが形に。二人三脚で繰り出される味はクラシックからイタリアの今を伝える最新形まで幅広く、じわじわとファンを増やしている。

ボンボローニは「ブームではなく、当たり前のものとして根づかせたい」と、小串さん。「シンプルなイタリア菓子は、細部で味が決まる」と、柑橘の香りの効かせ方や、砂糖のじゃりじゃり感などの落としどころを追求した。カスタードはもちろん、香り高いチョコラートも制覇したい。

代々木八幡〈1500〉(バールとイタリア菓子専門店)

イタリア菓子店併設のバールで
リストランテ仕込みの上品な味を

代々木八幡〈1500〉(バールとイタリア菓子専門店)のドーナツ
ボンボローニ(クリームドーナツ)1個400円。小ぶりなサイズだが、濃厚なクリームがたっぷり。

ズッパ・イングレーゼにババ、ティラミス! 冷蔵ケースに並ぶイタリアの生菓子は常時10種と、国内の専門店では屈指の充実ぶりで、バール併設だからカフェとともにイートインでも楽しめる。ベトナム料理〈ヨヨナム〉や洋菓子店〈ホルン〉などの系列店として今年4月にオープンした〈ミレチンクエチェント〉。イタリアン好きはもちろん、スイーツファンも熱い視線を注いでいる。

菓子の製造担当は、磯尾直寿さん。イタリア、日本のリストランテで菓子職人として腕を磨き、2000年代半ばからさまざまなイタリア菓子を紹介してきた先駆者の一人だ。「クリーム入り揚げドーナツは世界中で親しまれているおやつだけれど、オレンジの風味がイタリアならでは」と、磯尾さん。生地にオレンジの皮で香りづけをし、卵の味をしっかり感じるリッチなカスタードを詰めたボンボローニは、上品な味わい。エスプレッソと一緒に味わえば、心がイタリアへ飛んでいく。

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