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クラフトビール文化は、湘南の新しい波です。花井祐介×〈ヨロッコビール〉吉瀬明生

1990年代の地ビールブームを経て2010年代の日本に生まれたクラフトビールの流れに、いち早くシンクロしたのが海外のブルワリーを見知った1970年代生まれの世代。その種子が湘南エリアで芽吹いてから10年余り。今では日本のクラフトビールシーンをリードするブルワリーやボトルショップが続々と生まれている。

photo: Shin-ichi Yokoyama / text&edit: Akio Mitomi

ローカルで出合ったビールとアート

鎌倉の〈YOROCCO BEER〉が近年発売しているビールのラベルに、イラストを提供しているアーティストの花井祐介さん。ブルワーの吉瀬明生さんとの交流はどう生まれたのか?地元のカルチャーと密接に繋がるクラフトビールの豊かさが見えてくる。神奈川・逗子のヴィーガンカフェ〈Beach Muffin〉を訪れた花井祐介さんと吉瀬明生さん。ビールや地元にまつわるあれこれを話してくれた。

花井祐介のYOROCCO BEERポスター
〈YOROCCO BEER〉2周年イベント用に花井さんが描いたポスター。

吉瀬明生

花井くんと初めて会ったのもこのタップルームでしたね。

花井祐介

僕は〈YOROCCO BEER〉のファンで、飲みに来ていました。その前は地元でビールを造っている人がいると聞いて、逗子にあったブルワリーでボトルを買ったり。

吉瀬

〈Beach Muffin〉のオーナーが〈YOROCCO BEER〉を後押ししてこのタップルームを作らせてくれて。僕は毎週金土日、ブルワリーの作業後に来て、夜10時くらいまで立っていたんです。まだクラフトビールが珍しい時代だったので、少し遠くから来てくれる人も多かった。

花井

子供をお風呂に入れて寝かしつけてからここに来るっていうのが、毎週末の楽しみでしたね。

吉瀬

花井くんに最初に何かお願いしたのは〈YOROCCO BEER〉2周年のポスターなので、2014年。江ノ島から葉山ぐらいまでの間に住む、同年代の顔見知りの一人で。

花井

明生さんもこの寡黙な感じだから、ビールという接点があってここで出会うことができた。

ビーチマフィンで語らう吉瀬明生(右)と花井祐介(左)
吉瀬さんと花井さんが出会った逗子〈Beach Muffin〉の店奥にあるタップルームで。

吉瀬

色々な関係性があって、その中である程度繋がっていて。年をとってくるとその積み重ねがあるので、普段は会わないけど、会えばずっとしゃべっていられるみたいな感じ。

花井

まあ、生活していますからね。最初に〈YOROCCO BEER〉のラベルを描いたのは2017年の「BLACK BIRD SIPPING」の缶。黒ビールが好きなんですが、明生さんがベルジャンポーターを造ると聞いて、ビートルズの「ブラックバード」という曲では黒い鳥が夜中に歌っているけど、僕らはビールをすすっているなと思って、名づけました。

吉瀬

インディペンデントとオルタナティブが自分のテーマなので、大資本と個人だったら小さい方を選びたいし、常に王道から逸れた場所にいたい。そういう面でシンパシーを感じる人と仕事をしたいと、常々思っています。

花井

地元で何かやってる人がいたら気になるし、応援したいと言ったら上から目線になっちゃうけど。

吉瀬

花井くんも、小坪漁港が開発されかけた時、イラストで反対運動を手助けしたり、地元の何かをサポートしたい人だと思うんです。

花井

明生さんもだと思うけど、なるべく地元のオーガニックなものを使ったりするのが好きな人が多い。毎年秋の『Yorocco Beer Zushi Harvest Fest“収穫祭”』にも、地元の漁師さんがサザエを出したり。

吉瀬

収穫祭は例年11月3日に逗子市の〈市民交流センター〉フェスティバルパークを借りて、地元のブルワリーを3、4軒と食べ物の人たち10軒ぐらい呼んで、花井くんにワークショップやってもらったり。

花井

僕らが知り合った頃には想像もできなかったけど、最近は絵を描いて生活できるようになったし、〈ユニクロ〉のTシャツが世界で販売されるようにもなった。でも「〈YOROCCO BEER〉のラベルの人ですね」と言われるのが嬉しいですね。

ビールの返礼に花井祐介が吉瀬明生に贈った一点もののボトル
ビールの返礼に花井さんが贈った一点もののボトル。タップルームに立つ吉瀬さんの横顔が描かれている。