Drink

Drink

飲む

湘南ビアカルチャーの新しい担い手たち。ボトルショップ編

1990年代の地ビールブームを経て2010年代の日本に生まれたクラフトビールの流れに、いち早くシンクロしたのが海外のブルワリーを見知った1970年代生まれの世代。その種子が湘南エリアで芽吹いてから10年余り。今では日本のクラフトビールシーンをリードするブルワリーやボトルショップが続々と生まれている。ローカルなカルチャーの一環として、今注目すべきブルワリー5軒とボトルショップ4軒を紹介する。
ブルワリー編はこちら

photo: Shin-ichi Yokoyama / text: Koji Okano, Shunsuke Kimura / text & edit: Akio Mitomi

神奈川県の相模湾沿いに広がる湘南エリア。夏、海、サーフィン!というステレオタイプなイメージがつきまとうが、実は日々の暮らしで家族や友人を大切にし、買い物は地元の小商いを応援するといった、地に足のついた生活の場でもある。

そんな環境で2010年代からじわじわ増えてきたのが、ほかでもないクラフトビールの造り手や売り手たち。このエリアの中でもともと知り合いだったり、開業するにあたってアドバイスを求めたりしながら、相手のスタイルを尊重しつつも我が道を行く。

おいしいビールや居心地のいい店に対しては、互いに惜しみなく讃える。〈YOROCCO BEER〉の吉瀬明生さんが先駆者となった湘南ビアカルチャーの最新成果を、5軒のブルワリーと4軒のボトルショップで味わってもらいたい。

クラフトビール文化は、湘南の新しい波です。花井祐介×〈ヨロッコビール〉吉瀬明生

今注目すべきボトルショップ4軒

VANAVASA BEER+GALLERY(鎌倉)

グラウラーのビール持ち帰りを、日本でも当たり前のカルチャーに

店主の井伊乃士(だいし)さんが、米・ユタ州で参加した展示会で出会ったグラウラーに心奪われ、販売代理を始めたのが開店のきっかけ。「日本にビール持ち帰り文化を広めたいと思ったものの、当時ビールを詰めてくれる場所がなくて。ならばと自分で開きました」。

取り扱うビールも、店内ギャラリーでの展示も、地元の繋がりや信頼できる仲間の紹介を何より大切にしている。

鎌倉〈VANAVASA BEER+GALLERY〉店内
店主の井伊乃士(だいし)さん。量り売りは3タップとコンブチャなど。湘南や米を中心に60~100種のビールを扱う。展示は約1ヵ月で入れ替え。

へいわ(鵠沼海岸)

昼からクラフトで一杯!地元で愛される老舗の酒店

創業半世紀以上を誇る酒屋の冷蔵ケースを埋め尽くす、おびただしい数のクラフトビール。「もともと父の代からドイツとベルギーのビールを扱っていて、僕の代からはカリフォルニア州を中心にアメリカ産のビールに力を入れています」と、3代目の佐藤彰祐さん。

アメリカの樽生ビールを楽しめるため、早朝のサーフィンを終えて、テラスで⼀杯飲んでいく常連も多い。

神奈川〈へいわ〉外観
トレイルランニングが趣味という佐藤さん(左)。定期的にジョギングイベントを開催する。ゴールは〈へいわ〉で、完走後に皆で祝杯を挙げるそうだ。

California General Store(鵠沼海岸)

クラフトビールとサーフィン、西海岸カルチャーが出会う場

1997年に藤沢で開業したサーフショップ〈California General Store〉が〈ユナイテッドアローズ〉のもとリブランディング。

「サーフィンもクラフトビールもアメリカ西海岸で盛んなカルチャーなので、2021年にここへ移転した際にビールを扱うことにしました」とストアマネジャーの山﨑敬太さん。波に乗った後にIPA片手にまどろめると、サーファーに人気の場所だ。

神奈川〈California General Store〉店内
ストアマネジャーの山﨑敬太さん。クラフトビールはカリフォルニアの醸造所の銘柄のみ。ヘイジーIPA中心のセレクト。

tad bottle & bar(葉山)

唯一無二のラインアップで、「ほんの少し」の安らぐ時間を

葉山の日本料理屋〈琢亭〉の女将、佐々木礼子さんによる国内クラフトビールとクラフトサケの店。「長くお世話になった方に、やりたいことをやりなさいと背中を押されて。醸造やホップ栽培も考えましたが、自分が本当に好きなビールを提供できる場所を作りました」。

外販に慎重なブルワリーとも「焦らずに築く」丁寧な信頼関係作りで、ここだけの品揃えを実現。

葉山〈tad bottle & bar〉店内
店主の佐々木礼子さん。3タップには、湘南内外から個性的なビールが。〈琢亭〉店主が腕を振るう肴が提供される日も。