神奈川県の相模湾沿いに広がる湘南エリア。夏、海、サーフィン!というステレオタイプなイメージがつきまとうが、実は日々の暮らしで家族や友人を大切にし、買い物は地元の小商いを応援するといった、地に足のついた生活の場でもある。
そんな環境で2010年代からじわじわ増えてきたのが、ほかでもないクラフトビールの造り手や売り手たち。このエリアの中でもともと知り合いだったり、開業するにあたってアドバイスを求めたりしながら、相手のスタイルを尊重しつつも我が道を行く。
おいしいビールや居心地のいい店に対しては、互いに惜しみなく讃える。〈YOROCCO BEER〉の吉瀬明生さんが先駆者となった湘南ビアカルチャーの最新成果を、5軒のブルワリーと4軒のボトルショップで味わってもらいたい。
今注目すべきボトルショップ4軒
VANAVASA BEER+GALLERY(鎌倉)
グラウラーのビール持ち帰りを、日本でも当たり前のカルチャーに
店主の井伊乃士(だいし)さんが、米・ユタ州で参加した展示会で出会ったグラウラーに心奪われ、販売代理を始めたのが開店のきっかけ。「日本にビール持ち帰り文化を広めたいと思ったものの、当時ビールを詰めてくれる場所がなくて。ならばと自分で開きました」。
取り扱うビールも、店内ギャラリーでの展示も、地元の繋がりや信頼できる仲間の紹介を何より大切にしている。
へいわ(鵠沼海岸)
昼からクラフトで一杯!地元で愛される老舗の酒店
創業半世紀以上を誇る酒屋の冷蔵ケースを埋め尽くす、おびただしい数のクラフトビール。「もともと父の代からドイツとベルギーのビールを扱っていて、僕の代からはカリフォルニア州を中心にアメリカ産のビールに力を入れています」と、3代目の佐藤彰祐さん。
アメリカの樽生ビールを楽しめるため、早朝のサーフィンを終えて、テラスで⼀杯飲んでいく常連も多い。
California General Store(鵠沼海岸)
クラフトビールとサーフィン、西海岸カルチャーが出会う場
1997年に藤沢で開業したサーフショップ〈California General Store〉が〈ユナイテッドアローズ〉のもとリブランディング。
「サーフィンもクラフトビールもアメリカ西海岸で盛んなカルチャーなので、2021年にここへ移転した際にビールを扱うことにしました」とストアマネジャーの山﨑敬太さん。波に乗った後にIPA片手にまどろめると、サーファーに人気の場所だ。
tad bottle & bar(葉山)
唯一無二のラインアップで、「ほんの少し」の安らぐ時間を
葉山の日本料理屋〈琢亭〉の女将、佐々木礼子さんによる国内クラフトビールとクラフトサケの店。「長くお世話になった方に、やりたいことをやりなさいと背中を押されて。醸造やホップ栽培も考えましたが、自分が本当に好きなビールを提供できる場所を作りました」。
外販に慎重なブルワリーとも「焦らずに築く」丁寧な信頼関係作りで、ここだけの品揃えを実現。