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名伯楽の下から巣立った愛弟子は各地で大活躍〈なかむら一門〉の酒場

〈並木橋 なかむら〉系列店はいずれも〝中村イズム〟を継承しつつ、個性を生かして業界・地元で存在感を発揮する銘酒亭揃い。特に昨年から今年にかけては、〈仙川 えんどう〉〈歌舞伎座裏 まさし〉〈酒肴庵ひろし〉〈松濤 爛缶〉〈創和堂〉と新店ラッシュでその勢いが窺える。ここでは鍵となる酒場にフォーカス。

Photo: Shin-ichi Yokoyama / Text: Haruka Koishihara

酒肆一村(門前仲町)

幅広い料理と豊富な酒で魅了する
バーへのリスペクトが満ちる酒場

酒肆 一村の店主
普段は〈沿露目〉に立つ大野さん。

酒場好きが高じて、食の世界に転身した大野尚人さん。林高太郎さんと野元大輔さんのいた〈東山KAN〉を訪れ「理想的」と入社して〈銀座KAN〉に4年。一門総じて城西エリアへの出店が多い中、2013年に〈酒亭 沿露目〉、続いて16年に〈酒肆一村〉を東の名酒場街・門前仲町に。

レトロなバーの様相だが、レモンや季節の果物のサワーと多彩なつまみで今や地域の代表格だ。中村さんも認める図抜けた美意識の高さは、いでたちにも表れている。

酒家の元(恵比寿)

王道和食も中華もおまかせ
頼れるみんなの兄貴分

酒家の元の店主
お品書きの達筆ぶりも一門随一!

「なかむら一門」のメンバーが揃って「大さん!」と慕うのが、店主の野元大輔さん。それもそのはず、2017年に独立するまで17年にわたり、中村さんの現場の右腕として料理人たちを教育。

会社として請け負った外部プロデュース案件にも携わったベテランだ。3年前に43歳で、満を持しての独立。自身の店では、敬愛する中華つまみを充実させ、日本酒にワイン、紹興酒を揃える。確かな料理と「2軒目遣いも」と緩急自在な接客からは、抜群の安定感が漂う。

創和堂(恵比寿)

わずか3年の間に2軒オープン
勢いに乗る一門の風雲児

創和堂の店主
目指すはダイナミックな店、と酒井さん。

「なかむら一門」の最新店が、7月オープンのこちら。2018年に開店するや否や、人気店の仲間入りを果たした〈酒井商会〉の店主・酒井英彰さんによる2号店だ。

ウェイティングバーや個室も擁する40席超の大型店で、1軒目にはない炭焼き台を導入。料理や酒のラインナップもさらに充実させた。一門の中では大箱の〈並木橋なかむら〉に在籍した経験が、オペレーションに生かされている。「店を流行らせることが中村さんへの恩返し」と気合十分!

高太郎(渋谷)

来年で10周年を迎える名酒場は
業界・一門のトップランカー

高太郎の店主
ストイックな姿勢が仕事に表れる林さん。

「中村悌二から学んだのは、美意識・間合い・ハッタリの大切さ」と笑う店主の林高太郎さんは、2000年に中村さんの会社に入社。〈東山KAN〉の店長を務め、「人を育て売り上げを伸ばす恩返し」の後に、11年に独立。

困難な時代だったにもかかわらず、純米酒の品揃えと気の利いたつまみで即人気店に。「すべては居心地のいい空間作りともてなしのために」と、書道、茶道、華道を嗜む。その姿勢に学ぼうと、修業の仕上げに奉公を希望する一門の後輩も後を絶たない。

「燻玉ポテトサラダ」に代表される“アイコン”メニュー、故郷・香川県産の素材を使った料理や自身が打つ讃岐うどんが並ぶのは、毎日自ら毛筆で手書きする品書き。いずれも“中村イズム”の一端だ。