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日本のアイデアと海外の生産背景がミックスした〈フィータ〉と〈ブラスブロム〉のもの作り

日本国内の生産にこだわるブランドがある一方で、海外の特別な技術や産地にこだわるブランドがある。日本のアイデアと海外の生産背景がミックスしたもの作りも興味深い。

Photo: Chihiro Oshima, Ko Tsuchiya, Kozue Hanada / Edit: Shigeo Kanno

代々受け継がれる
伝統技術が生み出す服の価値。

ブランド:Pheeta(フィータ)

2019年デビューのフィータは、継承すべき稀少な技術や家族に引き継がれる特別な一着を意識したブランド。ディレクターの神出奈央子さんは、7年前からインドの工場を訪れ、様々な技術に着目してきた。その経験を生かし、インドのレース編みに特化した現地工場による一貫生産を実現。

「インドのリバーレースは、昔ながらの手作り感が魅力です。依頼しているのは、19世紀初頭の英国製のボビンレース編み機をいまだに使っている工場。生産量には限界がありますが、最高級のレースを編めます」と話す神出さん。4代目の現社長も職人で、親身になってサポートしてくれるそう。

「この編み機は、1台につき5000個のボビンが必要で、手作業で糸をかけています。図案を基に、柄組みパンチカードという板に、穴を開け柄を組み立てます」。

大変な労力のいる作業工程だが、これが、美しいリバーレースを仕上げる秘密なのだという。さらに、手仕事による装飾的なピンタックもこの工場の特筆すべき技術。

「3mm以下のピンタックは、機械では難しいんです。ここには、縫える職人がいるのが強みです」と言いながらサンプルを見る神出さんも満足そう。

物も技術も代々受け継がれるインドの文化を背景に、伝統的な技術を継承するフィータの服。そこから生み出された新しい価値観に共感する消費者も多いことだろう。

〈Pheeta〉 メンズシャツ
前身頃にピンタックを施したメンズシャツ。¥25,000(フィータ フォー ユナイテッドアローズ/ユナイテッドアローズ 原宿本店 TEL:03-3479-8180)

日本のライフスタイルに
ベルギー産のリネン素材を。

ブランド:Vlas Blomme(ブラスブロム)

リネンが主役のブランド、ヴラスブラムを2006年に設立した石井智さん。

「欧州で赴任生活を経験したのですが、なぜ、日本ではリネンが普及しないのか疑問でした。ブランドの立ち上げ当時に調べてみたら、国内にリネン農家は皆無で、日本の輸入統計を見てもリネンの割合はほぼゼロに近かった」。

この事実に驚愕した石井さんは、自ら原料を探しに産地であるベルギーのコルトレイクの工場へ辿り着いた。

「コルトレイクリネンは世界的にも有名でしなやかさも艶も最高級。僕は、ここの原料でリネン100%のカットソーを作り始めました。日本の工場に輸入した原料を持ち込み、いざカットソーの生地を編んでみたら大変なことに。リネン糸には、節が多く伸縮性もないので、編んでいる途中で針は折れ、穴が開く。工場側もノウハウがないのでお手上げ状態」。

石井さんは、約1年がかりで問題を解決し、カットソーを完成させた。そして、日本でのリネンにおける誤解も普及を妨げた原因の一つだという。

「リネンの服は、洗いざらしのシワを楽しむもので、毛羽立つのも魅力です。着続けていると柔らかい風合いになります。面倒な素材ではないんですよ。夏だけではなく一年中着られるものなのです」

ベルギー産リネンと日本の技術が融合したヴラスブラムの服は、その着心地のよさで、リネンに対する本当の価値観を教えてくれる。

〈Vlas Blomme〉カットソー
リネン100%のカットソー¥17,000(ヴラスブラム/ヴラスブラム目黒店 TEL:03-5724-3719)