Wear

Wear

着る

〈島精機製作所〉のホールガーメント®横編機。世界が注目するサステイナブルな技術に迫る

コンピューター横編機の世界シェアトップを誇る株式会社島精機製作所。ホールガーメント®横編機の登場で、日本の技術力の高さを知らしめた最新テクノロジーに迫る。

Photo: Yasuyuki / Edit: Shigeo Kanno

ホールガーメント®横編機による
新しいニット

国内外の多くのファッションデザイナーやアパレル関係者たちが知らない人がいない会社名。その名は〈島精機製作所〉。創業者は地元で和歌山のエジソンと譬えられるほどの技術者、島正博氏。

彼は、前身となる会社を経て1962年に株式会社島精機製作所を設立し、64年には、軍手用に全自動手袋編機の開発に成功。そのノウハウを生かし数々のマシンやデザインシステムを作り出した。現在では、コンピューター横編機の世界シェアでトップを誇る世界的企業だ。

なかでも、ここ数年でさらに脚光を浴びているのが、1995年に開発された、ホールガーメント®横編機。この編機は、現在でも後続機が登場している人気機種。コンピューターでプログラミングし、1着のニットが約1時間で立体成型され編み上げられてしまうスター級のマシン。

アパレル業界の革命ともいわれ、世界中から称賛されたこの横編機は、すでに、欧州の数多くの名だたるラグジュアリーブランドが採用している。企業によっては、これを数百台導入して生産することも。

世界が注目する
サステイナブルな技術

ホールガーメント®横編機が注目される理由は、1着あたりの仕上がり速度だけではない。まず無縫製なので、各パーツのカットロスがなく約30%の原料の無駄を省けることが挙げられる。また、縫製工程を伴わないため、従来よりも短期間で納品が可能。それにより、在庫補充へのレスポンスも格段に早い。さらに、人件費が抑えられるので、先進国の都市でも低コストのビジネスモデルを創り出せるだろう。

そして、同社のもう一つの顔が、これらを動かすソフトを作るIT企業的な側面。糸のデザインからニットデザイン、編機プログラムの作成、セールスプロモーションに至るまで総合的な服作りができるシステムを売っている。

クオリティの面でも、立体的で手編み感覚に限りなく近いローゲージ、インターシャ風ニット、異なる組織のニットなど多種多様なデザインが実現されている。

アパレル産業がサステイナブルな方向へ向かうなか、高品質かつ高効率な生産背景の裏側を支える株式会社島精機製作所の役割は大きい。特に、労働者の人手不足が社会問題化している日本では、これを改善するきっかけにもなり得る。また、ホールガーメント®横編機の特性を生かした、新世代のファッションブランドも出現することだろう。最終的には、ECサイトと組んで個人オーダーに対応する時代が来るかもしれない。

限りないポテンシャルを秘めたホールガーメント®横編機や運用デザインシステムは、ファッションの環境を大きく変えた。そして、次に求められるのは、日本が誇る最新テクノロジーを自由自在に使いこなす人材である。

〈SHIMA SEIKI〉ホールガーメント 横編機MACH2XS 123
ホールガーメント®横編機MACH2XS 123。プログラムされた無縫製ニットが、立体成型で編み上げられる様子。写真のようなシンプルなデザインであれば1着約30分で完成。8〜16ゲージの総針編成が可能。ホールガーメント及びWHOLEGARMENTは株式会社島精機製作所の登録商標です。