ご飯に合う「和食のシチュー」の完成形
歌舞伎座まで徒歩1分、蔵造りが目を引く〈銀之塔〉。「役者陣に温かいものを食べてほしい」とシチュー専門店を開いて約70年。贔屓の役者も多く、出前で熱々を届けるため器は土鍋に。フツフツと幸せな音を立てるシチューは、色味は味噌のごとく濃厚でいて、味わいはスッと澄んでいる。
これは香味野菜やテール肉などを3日間、火入れと寝かしを重ねる間、丹念にアクをすくうから。これぞ和のシチューの極意。
「ご飯に合う味が大前提ですから」と、代表の山内由起子さん。グラタンもベシャメルソースの中にシイタケが潜み、白米との親和性を生む。時代とともに店の大半がテーブル席に変わったが、この味はやはり、小上がりが似合うのだ。