銭湯から夜が始まり、
最後は気の置けないバーで眠る
15年ほど前、高円寺に引っ越して最初にしたことは酒場や銭湯を探すこと。今でもその時に見つけたコースが定番になっています。まず最初に向かうのは〈小杉湯〉。ミルク風呂に浸かった後、飲みたい気持ちをグッと我慢して温冷浴を3回繰り返すと、昼間の疲れなんてすっかり忘れてね。
高円寺は自分の街なんじゃないかという気分で〈一徳〉へ足を運びます。「あれお願い」と声をかけると、マスターが歌う「赤いスイートピー」のテープを流してくれるんです。彼の歌声を肴にもつ焼きを食べて、だらだらと飲む。夜も更けた頃に店を出て、最後は千鳥足で〈唐変木〉に吸い込まれていきます。
ウイスキーのソーダ割り片手に店内に響き渡るキース・ジャレットの『ケルン・コンサート』のレコードを聴いて、気づいたら寝てますね。終電間際に起こされるのですが、この神聖な眠りを誰にも邪魔されたくなくて、タクシーで帰ったこともありますよ。