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画家・牧野伊三夫、夜の行き先〈小杉湯/一徳/唐変木〉。本当は教えたくなかった あの人のナイトタイムアドレス

賑やかな東京の夜の片隅で、時には一人でしっとりと。とっておきの時間を過ごすなら?夜景を眺める川べりや、人もまばらな銭湯、深夜の喫茶店……人の数だけ、違う夜がある。いつもの夜の行き先を牧野伊三夫さんに聞きました。

illustration: Isao Makino / text: Nozomi Hasegawa / edit: Asuka Ochi

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銭湯から夜が始まり、
最後は気の置けないバーで眠る

牧野伊三夫 イラスト

15年ほど前、高円寺に引っ越して最初にしたことは酒場や銭湯を探すこと。今でもその時に見つけたコースが定番になっています。まず最初に向かうのは〈小杉湯〉。ミルク風呂に浸かった後、飲みたい気持ちをグッと我慢して温冷浴を3回繰り返すと、昼間の疲れなんてすっかり忘れてね。

高円寺は自分の街なんじゃないかという気分で〈一徳〉へ足を運びます。「あれお願い」と声をかけると、マスターが歌う「赤いスイートピー」のテープを流してくれるんです。彼の歌声を肴にもつ焼きを食べて、だらだらと飲む。夜も更けた頃に店を出て、最後は千鳥足で〈唐変木〉に吸い込まれていきます。

ウイスキーのソーダ割り片手に店内に響き渡るキース・ジャレットの『ケルン・コンサート』のレコードを聴いて、気づいたら寝てますね。終電間際に起こされるのですが、この神聖な眠りを誰にも邪魔されたくなくて、タクシーで帰ったこともありますよ。

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