流れていく酒場の会話こそ夜の真髄
吉祥寺から代々木上原に〈Roundabout〉が移転したばかりの頃、夜の憩いには〈串政〉があった。あの愛すべき場所がなくなった今、心の隙間を少しばかり埋めてくれる存在が〈サウダーヂな東京〉。席に着くとまず赤星を1本注文、そのあとは気分で過ごす。
吸った空気がすべて冗談となって吐き出される特異体質の持ち主である店主ボボさんとのやりとりも、たまたま隣り合ったほかのお客さんと交わした話の中身も、どちらも店を出た瞬間に綺麗に忘れているのが清々しい。
酒場の会話は、特別そこに意味を求めないもの。だからこそ気晴らしの余韻だけが残って心地よい。そんな「意味に還元されない無所属の時間」に身を置くことが、自分にとっての夜の真の価値といえるかもしれません。